特集

1000年にわたって造り続けられた色鮮やかな石窟たち

3月16日と30日の放送は、2回にわたって中国の敦煌近郊にある莫高窟を紹介します。内陸部の奥深く、砂漠の中にある文化遺産です。滅多に撮影することができない石窟内の美しい壁画の撮影を成功させた、柳沢ディレクターに話を聞きました。

敦煌の莫高窟I ,II

─敦煌というと中国と地中海を結ぶシルクロード沿いのオアシス都市として日本でも小説や映画などでその名を知られていますが、世界遺産に指定されているのはどういう場所なのですか?

柳沢ディレクター(以下、柳沢):敦煌市の近郊にある莫高窟という遺跡です。仏教遺跡で、壁画や仏像が残された石窟だけでも492、総数では700以上もの石窟があります。石窟の中には美しい壁画や仏像が残されていて、仏像の数は2400体にも及びます。

―ものすごい数ですが、いつ頃の時代のものなのでしょうか?

柳沢:古くは4世紀のものからあって、以降の約1000年の間、掘り続けられてきた石窟寺院です。これだけ長い期間にわたってずっと造られ続けたという点も、世界ではほかに例を見ない遺産です。長い歴史の中で民族が入り乱れた地域なのですが、仏教遺跡であることと僻地であることが幸いして残されてきたようです。また、内陸部で乾燥していることが、壁画や仏像の色彩を守ってきたと考えられています。

―石窟は現在、どのように保存されているのですか?

敦煌の莫高窟I ,II

柳沢:莫高窟は、断崖をくりぬいて作られた穴で僧侶たちの修行のために作られたのが始まりです。その後、豪華で華やかな窟が作られるようになりました。石窟内の仏像や壁画がたいへん美しい状態で保たれているのが特徴です。それらを劣化させないように維持していくため、保存されている石窟の外側はコンクリートで固められています。窟には扉が付けられて厳重に管理されているのです。

―普段は一般公開されているのですか?

柳沢:一部を観光客向けに公開しています。公開される石窟は日によって違うのですが、光や熱で劣化しないように内部に照明などはついていません。ガイドが持つ懐中電灯で壁画や仏像を照らして、観光客はその明かりで内部を見ることができます。