特集

1000年にわたって造り続けられた色鮮やかな石窟たち

─それだけ厳重に保管されている遺跡であれば、撮影にも気を使いますね。

敦煌の莫高窟I ,II

柳沢:10の石窟を撮影したのですが、限られた期間内で撮影する必要があったのでカメラの設置や移動がたいへんでした。様々な時代の石窟ですが、いずれの窟内も壁画や仏像はもちろん床から壁に至るまですべてが大切な作品です。機材を入れる前には床に布を敷き、ケーブルを引きずらないようにするなど神経を尖らせて撮影を行いました。

―劣化を防ぐため石窟には照明がなく、普段は真っ暗だということですが、撮影時の照明はどうしたのですか?

柳沢:発熱を抑えた特殊なライトを使うことで照明を使う許可が下りました。その甲斐あって、普段は見られない、光が当たった状態の石窟の全景を撮影できました。色鮮やかな壁画を番組内でもたっぷり紹介しますので、ぜひご覧ください。

―石窟の中の仏像にはどのような特徴があるのでしょうか?

敦煌の莫高窟I ,II

柳沢:大小様々なものがありますが、敦煌の仏像はその材料が特徴的です。仏像の多くは、砂と泥、それに綿花やワラなどを混ぜたもので形作られています。西域から伝わった仏像が、敦煌にある材料を用いて作られるようになったそうです。巨大な涅槃仏もあり、製作にも相当の時間がかかったと思われます。

―では最後に、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

柳沢:観光地として有名な莫高窟ですが、普段は懐中電灯の光でしか内部を見られません。今回は石窟の内部全体に照明を当ててハイビジョンの4倍の解像度がある最新の4Kカメラで撮影しているので、鮮やかな壁画の美しさを堪能できると思います。もし将来、実物をご覧になることがあったら、番組で見た全体像を頭に描くことで遺跡の魅力をより深く味わえると思います。

世界遺産の歩き方

敦煌の主食は小麦を練って作った麺で、肉や野菜の惣菜をかけて食べます。肉料理は羊肉がメインですが、近年は名物料理としてロバの肉が有名です。「驢肉黄麺」は見た目がミートソーススパゲッティーのようなロバ肉の麺で、各所で食べられます。「醤驢肉」というロバ肉のローストも名物になっています。