特集

氷点下60℃を記録する世界で最も寒い場所

2月23日の放送は、シベリアの内陸部にあるレナ川の石柱自然公園を紹介します。今回の番組のために、夏と冬、表情を変える2つの季節の取材を敢行。実に氷点下50℃近い寒さの中で取材を終えたばかりの江夏ディレクターに、その想像を絶する厳しい環境での撮影について話を聞きました。

─今回紹介する世界遺産はシベリアの自然遺産ということですが、どのような場所なのでしょうか?

レナ川の石柱自然公園

江夏:シベリアの中央部を流れる大河、レナ川の岸壁に並んだ巨大な石柱です。大きなものだと200メートルを超える高さで、連続して40キロにわたって並んでいます。

―これらの石柱はどのようにして出来上がったのですか?

江夏:こういった石柱は、雨風にさらされて風化するとによってできることが多いのですが、レナ川の石柱は出来上がるプロセスが他とは違います。シベリアの中央部は海岸からかなり離れた大陸性気候のため、冬は氷点下60℃にまで下がることがあります。そのため、シベリアの大地は、一年を通して土壌が凍っている永久凍土なのです。石柱を形成する石灰岩の層の内部の隙間も一年中凍っている永久凍土になっています。しかし、気温が40℃にも達する夏になると、石柱表面の氷が溶け、その水分が岩の隙間に入り込みます。それが冬の厳しい寒さで再び凍結する際、少しずつ岩を破壊して形作られたのです。

―1年の寒暖差は100℃にもなるということですね。厳寒の中での取材を終えてこられたばかりですが、現地の寒さはいかがでしたか?

レナ川の石柱自然公園

江夏:我々が取材したときは、気温がだいたい氷点下47℃でした。「寒い」というよりも「痛い」という感覚でしたね(笑)。極地仕様の防寒体制で撮影に臨んだので外に露出しているのは目の周辺だけなのですが、履く息で、まつ毛がどんどん凍っていくんですよ。

―そのような寒さの中では撮影も大変そうですね。

江夏:厚着をして分厚い手袋もしているので、何をするにも時間がかかります。夏なら15分程度で撮影できるシーンでも、冬だと2時間以上かかりました。機材の管理も大変で、金属部分に触れると皮膚が張り付いてしまうのですべて防寒用の布で覆い、カメラのバッテリーが冷えると動かなくなるので、スタッフが交換用のバッテリーを1つずつ服の中に着込んで持ち運んでいました。