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氷点下60℃を記録する世界で最も寒い場所

─取材は夏と冬の2回行われたということですが、これだけ寒暖差が激しいと取材状況もずいぶん違いますよね。

レナ川の石柱自然公園

江夏:まるで別の環境でしたね。石柱を撮影する際、展望台になっているところがあったので、夏の取材では1時間ほどかけてそこに登って撮影したんです。冬も同じシーンを撮影しようと思って再び訪れたのですが、登るだけでも2時間以上かかりました。厚着をしているので登っていると汗をかくのですが、氷点下50℃の世界ではその汗が命取りになることがあります。私も指先が軽い凍傷になってしまいました。

―人間には相当厳しい環境ですが、近くに人は住んでいるのですか?

江夏:それが住んでるんですよ。最も近い大都市はヤクーツクなのですが、そこから車で約6時間の1000人ほどの集落にホームステイさせてもらいました。夏はレナ川をボートで移動したのですが、冬は凍ったレナ川が道路になるので自動車で移動できます。冬の方が移動は楽でしたね。

―冬の街の中はどんな様子なんですか?

江夏:空気中の水分が凍っていて、街の中が霞んで見えるんです。ただ、人々は寒さに慣れているんで普通に外を歩いていました。ちなみに氷点下45℃を下回ると、ようやく小学校が休みになるそうです。

―石柱の話にもありましたが、この辺りは永久凍土が広がっていることでも知られていますね。

レナ川の石柱自然公園

江夏:夏でも1メートル下は凍っていて、凍土の厚さは最大で600メートルと世界最大級です。ヤクーツクには永久凍土研究所があり、様々な研究を行っています。冷凍マンモスの研究でも有名ですね。番組では、実際に地面をボーリングしてどれくらいの深さから凍っているのか調べています。

―最後に番組の視聴者のみなさんに見どころを紹介してください。

江夏:今も浸食が続く巨大な石柱の壮大さと、永久凍土が育んでいるシベリアの自然を堪能してください。世界で最も寒い地域で苦労して取材した氷点下50℃の世界のインパクトもお伝えしたいと思っています。

世界遺産の歩き方

レナ川の石柱自然公園は、レナ川が凍結していない時期にはクルーズでのツアーが組まれており、見学することができる。またヤクーツクには永久凍土にまつわる観光施設もあり、実際に地下に掘られた永久凍土の中を体験することも可能だ。