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宮口ディレクターインタビュー

―自然豊かな半島ですが、陸地にも特徴的な動物はいるのでしょうか?

オリンピック国立公園

宮口:森での撮影では、大型の鹿、エルクに出会えました。この鹿は一時は絶滅が危ぶまれた種で、公園内で保護されています。大きなものは400キロを超える巨体になり、近寄るのは危険だと、ガイドたちからも注意を受けました。ちょうど繁殖期を迎えたところだったのですが、角をぶつけ合うオス同士の争いを撮影することができました。現地の人でもなかなか見られない光景だそうです。

―それは貴重な映像ですね。森の中には他に印象的な生き物はいましたか?

宮口:バナナ・スラッグという、黄色い巨大なナメクジですね。得意じゃない人にとってはちょっと気持ち悪いかもしれません(笑)。実は森中にたくさんいて、色も黄色だけではないのです。ナメクジに適した湿気の多い環境が、この森の特徴と言えます。

―森の中はどんな状態なのでしょうか?

オリンピック国立公園

宮口:周囲のものがすべてコケに覆われているのです。コケの緑に染まった森は、一般的な森の風景とはまったく異なる、幻想的な世界でした。ワシントン州はアメリカでも最も雨が多い場所で、森の中は常に湿気を帯びています。そのせいで森の中がすべてコケに覆われているのです。地面はもちろん、木々の幹も一面のコケで、枝からはコケがヒモのように垂れ下がっています。

―その様子は、まるでジャングルのようですね。

宮口:北海道よりも北に位置する半島なのですが、温帯雨林が形成されている珍しい気候になっています。半島の至る所には松の仲間の「アメリカトウヒ」や「ベイスギ」の巨木も育っていて、中には樹齢1000年を超えるものもあります。