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小澤ディレクターインタビュー

11月10日の放送は、ペルーのリオアビセオ国立公園を紹介します。希少な動物が生息する自然と、貴重な文化遺産を擁する複合遺産です。取材したのは、これまでも数々の難所を訪れた経験のある小澤ディレクター。そんな小澤ディレクターに「今まで訪れた世界遺産の中でたどり着くのが最も困難だった」と言わしめた現地での厳しい道のりについて、まずは話を聞きました。

―今回のリオアビセオ国立公園はどのような世界遺産でしょうか?

リオアビセオ国立公園

小澤ディレクター(以下、小澤):アンデス山脈独特の自然を保有する地域で、1990年には自然遺産として登録されていました。かつて絶滅したと思われていた「イエローテイルドウーリーモンキー」という猿の生息も確認されています。その後、標高の高い場所で見つかったグラン・パハテン遺跡、ロス・ピンチュードス遺跡などの文化遺産が加わり、1992年に複合遺産として登録されました。

―リオアビセオ国立公園の取材で最も印象に残ったことは何ですか?

小澤:この国立公園は、たどり着くのが最も困難な世界遺産と言えると思います。実際に今回の世界遺産への道のりは、これまでの私の取材経験で一番たいへんでした。まず、基点となる街であるトルヒーヨから自動車で1日かけて移動しました。そこからラバに乗って2日、さらに馬では進めないルートを徒歩で2日間移動して、ようやくロス・ピンチュードス遺跡に到着したのです。

―ロス・ピンチュードス遺跡までの道はどんな状態なんですか?

小澤:この辺りには、銀や銅を産出する鉱山があります。そのための道路があるので途中までは自動車で移動できるのですが、その先には基本的に道はありません(笑)。また、ペルーは海岸線に都市が並び、国の大半はアンデス山脈と、アマゾンの深い森で覆われています。リオアビセオ国立公園は、西側から峠を越えてアマゾン源流域に入ったところにあるのですが、アンデス山脈を越えない限り近づくことができないのです。

―つまり、4000メートル級の山々を越える必要があるわけですね。

小澤:はい。しかも、ラバに乗るのは初めてです。簡単な扱い方だけ教えてもらったのですが、ラバを引いてくれる人もおらず、いきなり1人で乗馬することになりました。これがきつかった(笑)。通り道はほとんどが断崖の脇にあって、幅も狭いんです。特に急な坂を下るのがたいへんで、片手でカメラを持っていたカメラマンは落馬してしまいました。幸い軽傷で済み、撮影を続行できたので事なきを得ましたが、到着前の出来事だったので青ざめましたね。