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山下ディレクターインタビュー

10月は6日、13日と2回にわたって、日本で最初に登録された世界遺産「屋久島」を紹介します。以前にも番組で紹介したことがある屋久島ですが、これまであまり語られていなかった島にそびえる高い山々やそこを流れる川、屋久島と人との関わりにもスポットを当てた内容となっています。取材した南日本放送の山下浩一郎ディレクターと、撮影を担当した田之畑勇作カメラマンに話を聞きました。

―屋久島は以前にも番組で紹介したことがありますが、あらためて屋久島を紹介することになった理由を教えてください。

屋久島 I・II

山下ディレクター(以下、山下):屋久島は日本で初めて世界遺産に登録された自然遺産のひとつです。今年で登録から20年を迎え、あらためてその魅力を紹介する時期だと考えました。また屋久島といえば縄文杉に注目が集まりますが、取材を続ける中で、屋久島本来の姿や、その他の魅力も知ってもらいたいと強く思うようになったことも、今回取り上げることになった理由のひとつです。

―屋久島の本来の姿とは、どういったものなのでしょうか?

山下:島全体を表現するとすれば“岩の島”ですね。土は少なく、動植物にとっては厳しい環境と言えます。森や山を歩くと、巨大な岩や不思議な形をした岩があり、驚かされます。海底からせり上がった岩が島を作り、そこに長い時間をかけて巨木の森が育ったのです。映像を通して、1500万年という悠久の岩の時間、そして数千年という木々の時間を感じていただきたいですね。そんな環境で育ってきた縄文杉を始めとする巨木には、台風や大雪といった厳しい気候を1000年以上乗り越えてきた風格があります。

―そんな厳しい土地にもかかわらず、豊かな自然が息づいているのはなぜですか?

山下:そこに豊富な水があったからです。屋久島には標高の高い山があり、常に雲があります。毎日、島のどこかで雨が降るといわれるほど、雨が多いのが特徴です。森に降った雨は苔が蓄えます。植物たちは、その水を得て厳しい環境ながらも森を作り上げてきたのです。

―雨の多さが屋久島の自然を生み出しているのですね。

屋久島 I・II

山下:山で降った雨が花崗岩の山肌を削り、長い年月をかけて深く壮大な渓谷を作りました。川の水は温まる時間もなく流れ下ってくるので、透明で冷たいのが特徴です。そんな川の流れは、川底に「ポットホール」という不思議な丸い穴を作りました。これは川底の花崗岩のくぼみに小さな岩が入り、川の流れでくぼみの中を回転することで出来上がったものです。