特集

山下ディレクターインタビュー

―カメラマンの田之畑さんは、前回の放送のときにアシスタントとして参加されてと聞きました。撮影方法など、以前と比べて変わったところはありますか?

屋久島 I・II

田之畑カメラマン(以下、田之畑):前回の放送は6年前でした。そのときは初めてハイビジョンの撮影機材が導入され、とにかく美しい映像を記録することがテーマでした。今回は美しい映像はもちろんですが、デジタル機材の特徴を活かした独特の映像づくりにもトライしました。

―具体的にはどういった撮影に挑戦したのですか?

田之畑:小型の「アクションカム」を一脚に設置して持ち上げ、高い位置から移動中の光景を撮影してみたのですが、木の高さから撮影したようなユニークな映像になりました。また川の撮影では、深い渓谷をラジコンヘリで空撮しました。鳥の目線からの渓谷の壮大な景色を楽しんでいただきたいです。

―今回の撮影で苦労したのはどんなところでしょうか?

田之畑:屋久島は雨も多くて撮影機材にも厳しい環境です。普段は人が入らないところでの撮影が多かったので、撮りたいアングルにカメラをセットするだけでもひと苦労でした。その甲斐があって、絶滅が危ぶまれるヤクシマリンドウの開花など、貴重な映像が撮影できました。

―前回の放送では、1年を通した、屋久島の四季折々の風景を紹介しました。今回の取材期間はどれくらいでしたか?

山下:私も前回の番組制作に参加していて、それから7年にわたって取材してきたことになります。そのときに出会った“伝説の木こり”と呼ばれる山師の方がいたのですが、彼に密着する形で屋久島の取材を続けてきてきました。屋久島というと大自然にだけ目が行きがちですが、島にはそこで生活してきた人間の歴史と、その中で受け継がれてきた伝統などの遺産も存在します。そのご老人、高田久夫さんは、残念ながら先ごろ亡くなってしまったのですが、彼の言葉や思いを通して人と屋久島の関わりをお伝えできればと思っています。

―以前は伐採が盛んだった時代があったんですね。

屋久島 I・II

山下:屋久島の森には、実は人の手が多く入っています。以前は、時代が求めるままに伐採が進んでいました。40年くらい前に伐採は中止され、高田さんたち山師の方々は森の復活を願い、苗木を植え続けてきました。その森の復活のスピードはすごいものです。そこにも屋久島の力を感じました。あまり知られていませんが、屋久島は山桜の名所でもあります。復活した森が、日本一とも言われる山桜で彩られた姿もお届けします。

―最後に、視聴者の皆さんにメッセージをお願いします。

山下:番組では、屋久島の様々な魅力を貴重な映像でお伝えしたいと思っています。しかし屋久島の息づかいは、やはり森の中で感じていただくのが一番です。番組をきっかけに、多くの人に屋久島の原生林や山を歩いていただきたいと思います。何より感動が大きいですし、直接体験することで自然を大切にする気持ちもわいてきます。そのことが、この貴重な自然遺産を、後世に残していく原動力になると期待しています。縄文杉がクローズアップされることが多いですが、屋久島のすごさは「その先」にもあります。屋久島が世界に誇る森や山、そして渓谷の素晴らしい風景に注目してください。

世界遺産の歩き方

屋久島は、世界遺産エリアの中心を歩いて通ることができる数少ない自然遺産。原生林をたっぷり歩いて、その雄大さを味わおう。登山道に入って8kmのなだらかなトロッコ道を歩き、3kmほど登ると縄文杉にたどり着く。また屋久島には九州地方の最高峰となる標高1936mの宮之浦岳があるが、片道約5時間の本格的な登山コースとなる。登山経験者は、宮之浦岳とそれに連なる1800m級の山々の絶景を堪能してほしい。