特集

西オーストラリアのシャーク湾

特殊な環境が遺した生き物たち

―かつての地球上はこんな姿だった可能性があるわけですね。塩分濃度が通常の2倍ということですが、その影響は生物にどのような影響を与えているのでしょうか?

特殊な環境が遺した生き物たち

小澤:この特殊な環境は、生息できる生物を限定しています。観光名所ともなっている「シェル・ビーチ」は、貝殻が堆積してできた浜辺です。長さ 100kmにわたって一面真っ白な二枚貝に覆われていて、堆積した貝殻の層は10mもの厚さがあります。これは高い水温と塩分濃度のせいで貝の捕食者が存在しなかったため、大量発生した結果です。現在では禁止されていますが、かつては堆積して石化した貝殻を切り出したブロックを建材などに使っていました。貝殻ブロックで建造されたレストランと教会が現存しています。遠目には石のブロックですが、近づくとすべて貝殻でできているのがわかります。

―遠浅の地形も特徴ですが、それを好む動植物には何がいますか?

特殊な環境が遺した生き物たち

小澤:湾内の浅瀬には、一般的な海藻(かいそう)ではなく、光合成をして海底に根を張る海草(うみくさ)の草原が広がっていて、その規模は世界一と言われています。遠浅の湾が、太陽の光を必要とする海草にとって最適の環境になっているのです。それをエサにしているのがジュゴンです。繁殖率がとても低いジュゴンですが、この地域には約1万頭のジュゴンが生息しています。

―他にはどのような生き物と出会いましたか?

特殊な環境が遺した生き物たち

小澤:西オーストラリア固有種のビルビーは不思議な姿をした動物です。夜行性の有袋類なのですが、刺激しないように薄暗いライティングで待ち構えた結果、撮影に成功しました。また取材の移動中にはハリモグラにも遭遇しました。これも日本ではなじみの薄い動物ですが、その愛嬌のある動きを番組でご覧ください。他にも、餌付けされた野生のイルカや、ウミガメとの意外な出会いもあります。