特集

西オーストラリアのシャーク湾

特殊な環境が遺した生き物たち

9月1日の放送は、オーストラリアの西海岸にある自然遺産「西オーストラリアのシャーク湾」をお送りします。半島に囲まれ、平均9メートルという遠浅の広大な湾とその周辺は、独特の進化を遂げた動植物の宝庫となっています。担当した小澤ディレクターに、まずはその奇妙な生き物について話を聞きました。

―今回紹介する「西オーストラリアのシャーク湾」は、どういった場所になりますか?

特殊な環境が遺した生き物たち

小澤ディレクター(以下、小澤):オーストラリアの西海岸で、3つの島と複雑に入り組んだ半島に囲まれた湾です。幅は平均100km、南北に200kmと広大で、水深が平均9mと遠浅になっているのが特徴です。陸地はほとんどが砂漠という場所にあります。

―シャーク湾やその周辺には特徴的な動植物が多数生息しているそうですが、この地域を語る上で代表的なものを教えてください。

小澤:海岸に無数に並ぶ「ストロマトライト」です。見た目は丸い岩のようですが、シアノバクテリアという微生物の活動によって形成されたものです。分泌する粘液が微細な粒子を集め、年に0.4mmという速度で、長い時間をかけて堆積していったものです。これだけ広範囲に存在しているのは、シャーク湾だけです。

―ストロマトライトは、他の地域で見ることはできないものなのでしょうか?

小澤:バハマやペルシャ湾など、極限られた地域に生息していますが、これほど大規模なのはシャーク湾だけです。シアノバクテリアは、地球上で最も古い生命体のひとつで、地球で初めて光合成を行い酸素を作り出した生物と言われています。

―なぜここにはストロマトライトがこれだけ大規模に広がっているのですか?

小澤:シャーク湾は入り組んでいるため干満による海水の入れ替えが少ない上、気温が高く水の蒸発量も多いので、通常の海水よりも塩分濃度が高いのです。そのせいでストロマトライトの天敵がおらず、現在まで残ったと考えられます。そのため太古の地球の様子が再現された場所と言えます。番組内では、一般公開されていない、大群が生息している区域の様子も紹介しています。