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夏のベルギー運河の旅

―リフトはどういう仕組みで動いているのか教えてください。

中央運河の水力式リフト

江夏:大まかに説明すると、天秤を利用した仕掛けです。リフトには上流と下流、それぞれに船が入れるプールのような箱があり、上流のプールの水量を増やすことで重量の重くなったほうが下がって軽いほうが上に上がります。いわばエレベーターのようなものです。水門の開閉などに動力が必要ですが、それを生み出すのはリフトの横に建てられたエンジン室です。電気やガソリンなどは使っておらず、水だけを利用した「水力エンジン」が動力源なのです。高低差を利用して水をタービンで圧縮して15倍の水圧に高めています。

―今も中央運河は貨物運搬の要所となっているのでしょうか?

江夏:実は世界遺産の中央運河は、今では貨物船は通っていません。19世紀末に着工した中央運河は300トンクラスの船舶が通行できる規模で建設されましたが、20世紀半ばにはヨーロッパの国際標準の貨物船は1350トン級へと大型化していました。ベルギー南部の運河はフランス、オランダ、ドイツを繋ぐ交通の要所となるため、バイパスとなる新中央運河が、2002年に建設されたのです。こちらは約73メートルの高低差を1機のリフトで一気に解消します。

―1350トン級の貨物船を73メートルも上げ下げするとなると、相当大がかりなリフトが必要になりそうですが。

中央運河の水力式リフト

江夏:そうなんです。新中央運河のリフトは驚くほど巨大な建造物で、昇降機は高さ117メートル、全長130メートル、幅は71メートルで、「世界最大のエレベーター」と言われています。世界遺産の中央運河のリフトが熟練のエンジニアたちによってすべて手動で制御されているのに対して、新中央運河のリフトはコンピューター制御の最新鋭のものです。

―こちらも見どころのひとつになりそうですね。

江夏:巨大なリフトの様子を空撮でお届けしていますので、ぜひ映像でご覧いただきたいと思います。