特集

レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

自然との調和を目指した鉄道

―そんな画期的な鉄道技術も文化遺産として高く評価されたポイントのひとつなのでしょうね。

石渡:そうですね。文化遺産として登録されたのはレーティシュ鉄道の一部であるアルブラ線とベルニナ線の景観ですが、この路線の設計にもその美しい景観を存分に楽しませるための工夫が随所で見受けられます。

―その工夫とは具体的にどのようなものですか?

アルプスを越える氷河鉄道 レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

石渡:たとえば、アルブラ線では乗客がアルプスの美しい景観を楽しめるようにトンネルを極力少なくした設計がされています。また、渓谷をつなぐ高架橋も周囲の景観との調和を考えた美しいデザインが特徴的です。特にアルブラ線にあるランドヴァッサー橋は、ヨーロッパの数ある山岳鉄道の中で、最も美しい橋と讃えられているほどです。

―レーティシュ鉄道は自然との調和を大切にしているのですね。そんな美しい大自然の中を走行する機関車はどのようなものがあるのでしょうか?

アルプスを越える氷河鉄道 レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

石渡:現地では今、路線開通の100周年記念イベントが開催されていて、1980年代まで運行していた「クロコダイル」という機関車が期間限定で走行しています。この車両は形状がワニの姿に似ていることからこの愛称で呼ばれ、鉄道ファンから根強い人気を誇っているのですが、番組内では実際に走行する映像をお見せするのでご期待ください。

―鉄道好きは必見の映像となりそうですね。ほかにはどんな風景を見ることができますか?

石渡:ベルニナ線に乗って撮影しに行った氷河はひとつの見所となっています。この氷河には少し変わった通称があって「駅前氷河」なんて呼ばれているのです。

―なぜそのような呼び名がつけられたのでしょうか?

石渡:駅前氷河はベルニナ線のモルテラッツェという駅にあるのですが、路線の工事が始められた1900年当時、駅から数100mほどの場所に氷河があったことがその名の由来と言われています。この100年の間に地球温暖化で2km程後退してしまい、今では駅から45分くらい歩かなければ見ることができなくなってしまっていますが、それでも氷河が鉄道の近くにあるのは珍しいことです。