特集

レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

自然との調和を目指した鉄道

7月28日の放送では、スイス/イタリアの文化遺産「レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線」をお届けします。開通以来100年以上に渡って運行し続けているこの鉄道の魅力について、今回のディレクターインタビューでは番組を担当した石渡ディレクターにお話をお聞きしました。

―今回取り上げるレーティシュ鉄道は、どのような世界遺産なのでしょうか?

アルプスを越える氷河鉄道 レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

石渡ディレクター(以下、石渡):レーティシュ鉄道は主にスイスを走る山岳鉄道です。2008年にその一部である「アルブラ線」と「ベルニナ線」の美しい景観が認められ、文化遺産として登録されました。

―鉄道の世界遺産というのはあまり聞いたことがありませんが、ほかにもあるのでしょうか?

石渡:鉄道の世界遺産はとても珍しく、レーティシュ鉄道以外にはオーストリアの「ゼメリング鉄道」と「インドの山岳鉄道群」が登録されているのみです。

―ほかの鉄道と比べてレーティシュ鉄道にはどのような特徴があるのでしょうか?

石渡:レーティシュ鉄道は「アルプスを越える氷河鉄道」とも呼ばれており、海抜429mから2256mの高所に渡って伸びる線路が最大の特徴です。通常、このような急勾配を走る路線は、レールを切り替えながらジグザグに登っていく「スイッチバック方式」や、車両が勾配を逆走しないように線路と車輪に歯車を備え付けて固定する「ラック式」という方式を採用しているのですが、レーティシュ鉄道はそのどちらも用いていないという点で、ほかの鉄道と大きく異なっています。

―スイッチバック方式やラック式を用いずにどうやって急な勾配を登るのでしょうか?

アルプスを越える氷河鉄道 レーティシュ鉄道 アルブラ線とベルニナ線

石渡:レーティシュ鉄道では山肌に円を描くように線路を敷設する「ループ式」という方式を採用しています。これは大回りの迂回によって勾配を緩和しながら列車を走らせるという方法で、レーティシュ鉄道が作られた1910年当時にはとても画期的なものでした。