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世界遺産への登録間近! 富士山

時代を超えて人々を魅了し続ける山

富士山は今年の4月にユネスコの諮問機関「イコモス」によって世界遺産の登録勧告を受け、6月16日からカンボジアのプノンペンで開催される第37回世界遺産委員会会議で、いよいよ正式に文化遺産として登録されることになります。今回のディレクターインタビューでは、そんな日本を象徴する独立峰である富士山の魅力について、番組を担当する静岡放送の鈴木ディレクターにお話をお聞きしました。

―間もなく富士山が正式に世界遺産に登録されますね。しかし、これほどの山がなぜ今に至るまで世界遺産に登録されていなかったか、不思議に思っている人も多いと思います。

時代を超えて人々を魅了し続ける山

鈴木ディレクター(以下、鈴木):そもそも世界遺産とは自然遺産と文化遺産に分けられるのですが、今回、富士山の登録が認められたのは文化遺産の方です。実は富士山は自然遺産としての登録を目指していた経緯があったのですが、一度は登録を諦めたのです。

―なぜ自然遺産としての登録を諦めたのですか?

鈴木:自然遺産として評価されるには、環境の保全が重要な基準となってくるのですが、富士山はゴミの投棄問題などがネックとなり諦めることとなったのです。

―そこで自然遺産ではなく、文化遺産としての登録を目指すこととなったのですね。

鈴木:はい。今回、富士山はその景観を含め、古くから信仰の対象となっていたことが主に評価されて、文化遺産にふさわしいという勧告を受けました。

―現代の日本人の感覚では、富士山に対する思いは信仰というよりは、より広い意味で心の拠り所として存在しているように思われます。

時代を超えて人々を魅了し続ける山

鈴木:そうですね。しかし、そんな私たちの“富士山愛”のような感情も、元を辿ると富士山への畏怖の念から始まったのだということはあまり知られていません。

―富士山への畏怖の念、とはどのようなことですか?

鈴木:実は富士山は活火山で、昔から大規模な噴火が度々ありました。当時の人々はそんな富士山を恐れ、崇めていたのです。しかし、やがて火山活動が沈静化すると、日本古来の「山岳信仰」と相まって、富士山は修験者たちの修行の場へと変わりました。

―恐怖が信仰へと変わっていったというのは少し意外ですね。

鈴木:そうですね。
それもやがて江戸時代になると、修行としての登山ではなく「富士講」と呼ばれる富士山信仰サークルのような形へと変化していきました。彼らはグループでお金を集めて、富士登山をしていたようです。