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インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

ひとりの天才がつくった星の遊園地

6月9日の放送では、インドの文化遺産「ジャイプルの天体観測施設」をお届けします。建造されて以来、280年以上に渡って天体観測所として機能し続けているこの施設について、担当の江夏ディレクターにお話をお聞きしました。

―今回取材された「ジャイプルの天体観測施設」はどのような世界遺産なのでしょうか?

インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

江夏ディレクター(以下、江夏):ジャイプルの天体観測施設は、18世紀初頭に肉眼による観測を目的としてつくられました。2010年に文化遺産として登録されています。

―天体観測施設の世界遺産というのは珍しいですね。

江夏:そうですね。とても興味深い遺産であることは間違いないのですが、番組での見せ方は少し難しくて苦労しました。

―「難しい」というのは具体的にどのようなところなのでしょうか?

江夏:ジャイプルの天体観測施設には、専門的な建造物が多いので、われわれ一般人が説明を聞いてもなかなか理解ができません。当時ジャイプルを治めていた「ジャイ・シン2世」というマハラジャがつくったものなのですが、この人はあらゆる学問に精通する天才的な頭脳を持っていました。中でも天文の世界にとても興味を持っていたため、王宮の一角にこの施設をつくったのです。

―確かに天文学というと難しいイメージがありますね。その世界遺産を番組ではどのように紹介しているのでしょうか?

インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

江夏:施設内にある建造物は、どれも現代アートのオブジェのように洗練されたデザインでつくられているのが特徴です。そのため、今回の取材では照明やクレーンなどの機材をふんだんに用いて建造物の芸術的な美しさを引き立てる映像を撮影しました。

―何百年も前につくられたものが現代的なデザインをしている、というのは不思議な感じがします。

江夏:そうですね。その個性的なデザインからもわかるように、ジャイ・シン2世は建築学への造詣も深かったようです。彼のすごい所は、そのアーティスティックな発想から生み出したものが、とても利にかなっているというところです。