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インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

ひとりの天才がつくった星の遊園地

―ジャイプルの天体観測施設にはさまざまな施設があるということですが、具体的にはどのようなものがあるのですか?

インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

江夏:世界最大の日時計や惑星の位置を計測する道具などがあります。その形状や画期的な観測方法は、当時の世界の天文学者からも高い評価を得ていたようです。今回の放送では、ジャイ・スィン2世が当時これらの道具を用いてどのように観測をしていたのか、ということも役者に再現してもらっているので、是非ご覧になっていただきたいです。

―それはひとつの見所となりそうですね。ジャイ・スィン2世は観測を通して、どのような研究をしていたのですか?

江夏:当時、インドの暦は誤差があることがわかっていたため、施設では正確な暦をつくるための観測が進められていたようです。また、インドでは星座や惑星の位置を元に星占いを行ない、国政や宗教儀式の日程を取り決めていたので、正確な天文表の作成は国家にとっても重要な課題だったのです。彼自身による観測の記録も見つかっていて、現在も毎年新たな天文表を作る際の参考となっているんですよ。

―インドでは占星術が政治とも深く結びついていたのですね。

インドのマハラジャが280年前につくった天文台「ジャイプルの天体観測施設」

江夏:はい。1800年代に国の未来を占ったホロスコープと、その内容が書かれた資料が発見されているのですが、そこには「今年は雨が多いので、人民は安らかに暮らせるであろう」とか、「今年の国境地帯は安泰である」といった占いが記されています。その占いが実際に当たったのかどうかは別としても、当時の人々にとってそれが心のよりどころであったことは確かなようです。また、占星術は現在でも、インド国民の生活に深く根付いているのですよ。