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ゾウが作った森にゴリラが暮らす!サンガ川流域の森林地帯

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

―今回取材した「サンガ川流域の森林地帯」はどういった世界遺産なのでしょうか?

小澤:「サンガ川流域の森林地帯」は英語の登録名では「Sangha Trinational」と言い、カメルーン共和国、コンゴ共和国、中央アフリカ共和国の3カ国がそれぞれ有する3つの国立公園の総称です。合計面積75万ヘクタール以上にもなる、この地域はいまだに人間の営みの影響をほとんど受けていません。3カ国に渡っているといっても国境は人間が引いたものですから、森自体はサンガ川流域にあり、1つにつながっています。今回は3つの国のうちコンゴ共和国で取材しました。

―サンガ川流域の森林地帯の森にはどんな特徴があるのでしょうか?

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

小澤:森のいたる所に存在する「バイ」と呼ばれる湿地が特徴的です。その湿地には動物が集まるのですが、彼らの目的は水だけではありません。バイの土には塩分が含まれていて、海から離れた内陸部では貴重な塩分の補給源になっています。このバイの成り立ちが実にユニークで、どうやってできたかというと、長い年月をかけてゾウが作ったということなのです。

―いったいゾウがどうやって沼地を作ったのですか?

小澤:ゾウはミネラルを求めて森の中の土を掘り、土ごと塩分を摂取します。そうすると木の根元とかも掘り返してしまうので、木が枯れて、倒れます。それを何百年と繰り返し、そこをゾウが踏み固めたり、水が流れ込んだりしてできたのがバイなのです。私たちが今回取材したバイの中で最も大きなものは長さが600m、幅が200m位もありました。

―そんなに大きなものをゾウが作ったとは想像がつきませんね。

小澤:森の中には道があるのですが、これもゾウが作ったものなんですよ。ゾウが自分で歩きやすいように、何度も何度も踏みしめて通った道なのです。この道は森の中を網目のように通っていて、それぞれがバイにつながっているんです。

―バイも道も、となるとまるでゾウが作った森という気がしますね。

危険がいっぱいの森を歩き続けてたどり着いた、動物たちの聖域

小澤:そうですね。ゾウは森を作るだけではなく、維持する上でも役立っているのです。木の実をゾウが食べ、その種がフンと一緒に土に落ち、そこで芽を出して木が育ちます。木の実が地面に落ちるより、ゾウのフンと一緒の方が発芽率が高いそうです。