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観れば“お腹が減る!?”食にまつわる世界遺産

文明と食は二人三脚で発展したと実感した THE世界遺産ディレクター取材記

―今のパンとは違う形だったのですね。そこからどんな過程を経て、現在食べられているようなパンになったのでしょうか?

文明と食は二人三脚で発展したと実感した THE世界遺産ディレクター取材記

飯塚:ピラミッドを作っていた時代とほぼ変わらないというパンの製法が伝わっており、番組で取材しました。少し膨らんでいますが、けっこう固いんです。ですがアナトリアのパンとこのパンを比べると一段階進化していて、文明と食の発達はシンクロしているとわかります。古代エジプトがピラミッドのような巨大建築を建造できたのは、進化したパンの力かもしれません。そこからさらに進み、今のようなふわふわとしたパンは古代ローマで完成したようです。イタリアの世界遺産『ポンペイの遺跡』から炭化した焼きたてのパンが発掘されました。それは今と同じようなふっくらとしたパンです。

―メソポタミア、エジプト、古代ローマと時代が進むにつれて、パンがふくらんでいったのですね。世界中へ広がって行ったという小麦ですが、番組ではほかにどんな世界遺産と小麦の関わりを取り上げているのでしょうか?

文明と食は二人三脚で発展したと実感した THE世界遺産ディレクター取材記

飯塚:もちろんヨーロッパや中東だけでなく、東洋の小麦文化にも目を向けています。小麦が中国にいくと、今度は麺に姿を変えます。兵馬俑で有名な世界遺産『秦の始皇帝陵』から石臼が出土しているので、紀元前200年頃には小麦を食べていたようです。中国の麺文化を紹介するために、300種類以上の麺がある山西省の世界遺産『平遙古城』という世界遺産の街へも取材へ行きました。

―300種類とはすごい数ですね。どうしてそんなに種類があるのでしょうか?

飯塚:飽きずに毎日食べるための工夫だったのではないでしょうか。形を変えるだけで、面白いほど触感や味が変わります。イタリアのパスタもさまざまな形がありますが、同じような理由だと思います。製法が伝わったのか、同じことを考えついたのか、未だに定説はないそうですが、人間の知恵はすごいと実感しました。