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新しい日本の世界遺産「平泉−浄土を表す建築・庭園」と「小笠原諸島」

小笠原諸島

小笠原諸島は東京湾から南に1000kmの位置に浮かぶ180あまりの島々。この度、この小笠原諸島に息づく独自の生態系により、自然遺産に登録されました。小笠原諸島で取材を行った堀江ディレクターに、現地の様子を聞きました。

もう1つの新しい世界遺産、小笠原諸島に関してお聞きします。こちらが世界遺産に登録されたのはどういった理由なのでしょうか?

小笠原諸島

堀江:小笠原諸島には独自の生態系が広がっており、その点が評価されました。地球上に島はたくさんありますが、そのほとんどが、地殻変動の際に大陸から離れて島となったものです。ところが、小笠原諸島はおよそ4400万年以上前の成立以来、一度も大陸と地続きになったことがありません。小笠原諸島の生態系には陸づたいにやってくる天敵がいないため、世界中でも類を見ない進化を見ることができます。

なんだか日本版のガラパゴス諸島のようですね。

堀江:はい。ガラパゴス諸島ではイグアナなどの大型動物が有名ですね。それに対し、小笠原諸島では、番組でも取り上げているカタツムリなど、比較的小型の動物が多いです。流木にくっついてやってきたとか、鳥の羽根に紛れ込んできたなど、理由は定かではありませんが、300万年ほど前にカタツムリが小笠原諸島に生息し始めました。それ以来、天敵に遭遇することなくその数を増やし、進化を遂げ、今では100種類ほどにまで増えています。

番組の中ではどんなカタツムリが紹介されているのでしょうか?

小笠原諸島

堀江:映像で紹介しているのは、1本の同じ木の中で数種類のカタツムリが住み分けをしているものです。あるカタツムリは木の上のほうで、こぶにカモフラージュしています。木の真ん中のほうで目を凝らすと、葉のスキマにフィットして菱形になってしまっているものがいたり、その木の根元には土の色に適応しているものがいたりと、それぞれユニークです。これらは「カタマイマイ」と呼ばれる種類のカタツムリで100万年前は同じ個体だったものが、その後長い時間を経て住み分けするようになった珍しい例とされています。カタマイマイの大きくても数センチ、小さいものだと1ミリ程度で、専門家の方が探してやっと見つかるほどなので、貴重な映像です。

番組では、ほかにはどんな珍しい動物が登場するのでしょうか?

小笠原諸島

堀江:小笠原諸島は鳥の楽園とも言われています。今回はその中でも幻の鳥と言われている、「アカガシラカラスバト」というハトを撮影することができました。名前の通り、赤い頭とカラスのような黒い体をした体長40センチほどのハトです。これまでテレビの取材などではなかなかカメラに収めることができていなかったのですが、今回はハイビジョンでの撮影に成功しました。番組の冒頭部分で登場しますので、お見逃しなく。

それは大変貴重な映像ですね。では、最後に視聴者の方にひと言お願いします。

堀江:独自の生態系を持っている小笠原諸島ですが、人間が暮らしている島もあり、観光客も訪れます。人間が持ち込んだネコにアカガシラカラズバトが食べられてしまうこともありました。地元の方は、外来種が生態系を崩さないように、森に入る際にはローラーをかけて服についている植物の種を払ったり、無人島に上陸する際にはまず靴の裏を海水で洗うなどの心がけや工夫をしながら暮らしています。だからこそ小笠原独自の自然が保たれているのです。番組をご覧になり、その生態系の貴重さを感じていただければうれしいです。