特集
6月19日より、第35回世界遺産委員会がフランスのパリで行われています。その模様を世界遺産のスタッフが現地からレポートしていきます。 レポートは到着次第、特集ページにアップしていきますのでお楽しみに!
委員会報告 8
やった!やりました!平泉が世界遺産に登録されることになりました。
登録決定後、ユネスコ日本政府代表部の木曽大使、岩手県の達増知事、平泉の菅原町長、文化庁の近藤長官の4人がいっしょにパリで記者会見。
近藤長官は「この3年、平泉のことを忘れたことはなかった」と感極まり、声を詰まらせました。
実は、平泉は3年前に世界遺産の登録にチャレンジして、失敗しています。
審議の結果は、簡単に言うと上から4段階に分かれていて、
1:「登録」 =世界遺産入り。
2:「情報照会」=今回はダメだけど、再チャレンジできる。
3:「登録延期」=今回はダメだけど、推薦書をまとめ直して再チャレンジできる(が最短でも2年かかる)。
4:「不登録」 =今回も今後もダメ。
前回の平泉は、下から2番目の「登録延期」でした。そこからわずか3年で捲土重来を果たした原動力は、「忘れられない」悔しさだったようです。
一方、平泉の菅原町長は、
「この委員会にずっと出ていて、世界遺産の『保存』と『開発』の問題がよくわかりました。その中で、遺産をどう生かしていくのかが今後の責務だと思います」
と述べました。
確かに、世界遺産委員会は、登録されたあとの保存状態について時間をかけてチェックし、場合によっては「危機遺産(保存状態がピンチの世界遺産)」のリストに入れることによって、当事者に改善を迫っていました。
そして、保存状態がピンチになるときの大きな原因のひとつが、『開発』であることも、今回、出席していてよく分かりました。
世界遺産に登録されるのは喜ばしいことである一方、経済発展や観光振興のための『開発』と相反する『保存』の責務を負うことでもあります。
菅原町長は、今回の委員会に最初から出席して、危機遺産をめぐる審議も聞いていました。だからこそ、喜び一辺倒ではなく、「責務」がスタートしたことについても理解し、上記のコメントが出て来たのかなと思った次第です。
この日は、平泉の他にも7件が新たに世界遺産への登録が決まりました。
ドイツの「The Ancient Beech Forests of Germany as an extension to the World Heritage site of Primeval Beech Forests of the Carpathians (Slovakia, Ukraine)」
*「カルパチア山脈のブナ原生林」(スロバキア、ウクライナ)の範囲拡張でドイツのブナ原生林も世界遺産に登録されることになりました。
バルバドスの「Historic Bridgetown and its Garrison(ブリッジタウンと要塞)」
コロンビアの「The Coffee Cultural Landscape of Colombia(コーヒーの文化的景観)」
スーダンの「The Archaeological Sites of the Island of Meroe(メロエの島の考古遺跡群)」
ヨルダンの「Wadi Rum Protected Area(ワディ・ラム保護区)」
イタリアの「The Longobards in Italy, Places of Power , 568−774 A.D.(イタリアのランゴバルド族 紀元568年〜774年の栄華の地)」
ドイツの「The Fagus Factory in Alfeld(アルフェルトにあるファーグスの工場)」
番組で、これからご紹介していくことになると思いますので、お楽しみに。
プロデューサー 堤

(左から木曽大使、達増岩手県知事、
平泉・菅原町長、近藤文化庁長官)

平泉・菅原町長

近藤文化庁長官