特集
6月19日より、第35回世界遺産委員会がフランスのパリで行われています。その模様を世界遺産のスタッフが現地からレポートしていきます。 レポートは到着次第、特集ページにアップしていきますのでお楽しみに!
委員会報告 12
パリ現地時間の29日、私にとって初めての世界遺産委員会は終わりました。
これまでは「世界遺産はユネスコが決めているんだろうな」くらいの認識しかなかったのですが、いやはやその奥深かかったこと。
「スターウォーズ」の共和国評議会みたいな、さまざまな人種と言語と民族衣装が入り交じった世界で、それぞれの国の推薦するものが登録されるかどうか、思惑と駆け引き、国際政治までからみあっていました。
一方で、駆け引きだけではなく、世界遺産となるための条件が定められています。それがOutstanding Universal Value(日本語では「顕著な普遍的価値」)を有していること。普遍的価値と訳してしまうと、なにやら原理主義に匂いがしますが、全く違いました。
ある時代やある地域の文化と自然・・・・・・それぞれに固有の価値を認めた上で、参加各国が「納得できる線」で登録するかどうかを決めていく。
塩野七生は、古代ローマが世界帝国たり得た理由を異なった文化・宗教を否定しなかったこととしていますが、国際会議で国境をまたいで物事をまとめていくときには、同じやり方になるんだなと感じ入りました。
また興味深かったのが、「危機遺産」の存在。
開発や国際紛争、内紛で保存が危機的状況にある世界遺産をチェックし、危機遺産として登録し、当事者にプレッシャーをかける。これによって、地球環境や平和という人類規模の問題にまで関わっていることがわかりました。
来年で、世界遺産条約がユネスコ総会で採決されてから40年になります。この40年かけて育んできた人類の叡智、それが世界遺産なのかもしれないと、今回、感じました。
なんだか、ちょっと難しい話しになってしまいました。
でも、パリで得たものをアタマの片隅に入れて、今後の番組制作に生かせればと思っています。
プロデューサー 堤