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地球史を体感

バイカル湖編 石渡ディレクターインタビュー

最も美しい景観があると言われているというオリホン島の最北端では、実際にはどのような景色が広がっていたのでしょうか。

石渡:まさに一面「氷の世界」で、絶景でした。美しさに加え、無限に広がるかのような氷の世界には理屈抜きに脱帽です。氷は透明なガラスのようで、下は水深約1600メートルの湖です。ものすごく深くて、もちろん光が届かない世界ですから、深い緑色や紺色が1メートルの氷を通して見えるわけです。取材中に、その氷に目の前でパキパキとひびが入っていく様子を見たのですが、ひょっとしたら割れて水の中に落ちるかもと思いましたね。

それはかなり怖そうですね……。バイカル湖の水中に生物はいるのですか?

石渡:世界で唯一淡水に生息するアザラシであるバイカルアザラシがいます。湖が凍結する時期が出産期と重なっており、取材中には子どもに遭遇できました。また、カジカ類やヨコエビ(エビの仲間)が多く、プランクトンをヨコエビが食べ、ヨコエビをカジカが食べ、それをアザラシが食べるといった食物連鎖を形成しています。バイカル湖は、南米ガラパゴス諸島と並び「生きた進化の博物館」と言われるほど、特徴的な生物が生息している場所なのです。

最後に番組の見どころと視聴者の方へメッセージをお願いします。

石渡:4500万年前の地殻変動で生まれた湖なので、スケール感が圧倒的です。人間の感覚では推し量れない地球自体の営みを、まずは目でお楽しみください。また、人間が生きる時間とはかけ離れた時間が流れる大自然が、日本から時差1時間の場所にあるという、その不思議さを想像して観ていただいても楽しめると思います。

世界遺産の歩き方

オリホン島周辺は夏の観光地だが、シーズンオフの冬場はロシア人の釣り客だけとなる。食べ物は、水中に定置網を仕掛け小さい穴を空けて引っ張る伝統漁で、「オオムリ」というサケマス類が多い。
これをボイルにして、塩や香りづけのハーブでいただく。周辺はモンゴル系のブリヤート人が住んでおり、味覚的にも日本と似ている。ちなみに、冬場は船ではなくトラックで漁に出かける。