特集

地球史を体感

ケニア山国立公園編 小澤ディレクターインタビュー

氷河の次は、いよいよ頂きへとなるわけですが、その際の様子を教えてください。

ケニア山国立公園編

小澤:氷河を越えると、頂上までは再び岩場が続きます。ケニア山の登山ルートの中ではここが一番の急勾配で難所とされています。私たちは頂上で朝日を撮影するために、この岩場の前でさらに1泊して、翌朝の4時に山小屋を出発しました。周囲は真っ暗でヘッドライトのみの視界が狭い中、岩場に挑むことになりました。暗いだけでなく、岩の表面が低温で凍結して、アイスバーンのようになっていたので、滑り落ちてしまわないように細心の注意しながらの登山です。頂上に着いて夜明けの様子や辺りの景色の撮影などを済ませ、下山するときになって、明るい光の下で自分たちが登ってきた場所を見て、初めてその険しさにビックリしました。一緒に登った現地のポーターの一人が腰を抜かしてしまったほどです。

暗くて視界が狭いことで恐怖を感じずに済んだのですね。そのようにして登った山頂からはどのような景色が広がっていたのでしょうか。

小澤:ほとんど植物は見られず荒涼としています。周囲には、大昔に氷河によって削られた、鋭いU字の谷が四方八方に広がっており、氷河の力強さを感じることができます。この景色を見ながら、ここにゆっくりと氷河が流れていた時代に思いを馳せてみると、地球の長い歴史を感じました。

まさに今回のテーマである「地球史を体感」したわけですね。では、番組の見どころを教えてください。

ケニア山国立公園編

小澤:番組内には、レナナ峰からの日の出の映像が登場します。地平線の彼方から太陽が顔を出したときの、太陽のオレンジ色と夜空の深い青とのグラデーションは神秘的で、息をのむほど美しいものでした。番組の中で、太陽が昇っていくにつれ周囲がだんだんとオレンジ色に変化していく様子をご覧いただければ、私たちが感じた感動を味わっていただけると思います。

最後に視聴者の方へのメッセージをお願いします。

ケニア山国立公園編

小澤:ケニア山はその成立から300万年以上という、想像を絶するような長い時間をかけ現在の姿となっています。そのとてつもない地球の時間の流れが、氷河などケニア山の景色に凝縮されています。雄大な映像から、地球の悠久の歴史を感じていただけたらうれしいです。

世界遺産の歩き方

「ケニア山国立公園」から西に車で150kmほど行くと、「ボゴリア湖」が見えてくる。ここではフラミンゴを見ることができる。この周辺は火山地帯で、火山の成分が湖に溶け出しているため、ボゴリア湖は強いアルカリ性の水質となっている。この影響でボゴリア湖では赤い藻が育つ。フラミンゴの体が赤いのは、この藻を食べているためだとされている。