特集

奇妙な木々が生える「インド洋のガラパゴス」

ソコトラ諸島

「インド洋のガラパゴス」の異名を持つほど、島固有の植物が多く、独自の生態系をもったイエメンの自然遺産、ソコトラ諸島。ほかでは見ることのできない不思議な姿をした植物が数多く生えているのが最大の特徴の島です。その地で取材を行った石渡ディレクターにお話を聞きました。


Q:イエメンというと、日本人にはややなじみが薄い国ですが、まずイエメンとソコトラ諸島の概要を教えてください。

A:イエメンはアラビア半島の南端に位置しており、敬虔なイスラム教徒の国家です。ソコトラ諸島はイエメンに属してはいますが、地理的にはアフリカの東端の国、ソマリアに近くにあります。今回は、ソコトラ諸島の4島のうち、最大の島であり、人が住む唯一の島であるソコトラ島で取材を行いました。ソコトラ島はソマリアの東の沖、約230kmのインド洋に浮かぶ島で、埼玉県とほぼ同等の大きさがあります。またこの島は、インド洋をわたってきた船がたどりつく、「海のシルクロード」の重要な中継地でした。そこには島固有の貴重な植物が多く自生しており、「インド洋のガラパゴス」や「植物のガラパゴス」などと呼ばれることもあるほどです。

ソコトラ諸島

Q:「ガラパゴス」と呼ばれるのはそれだけ固有種が特徴的なのだと思いますが、具体的にはどのような植物が自生しているのでしょうか?

A:世界で唯一のウリ科の樹木である「キューカンバーツリー」や、幹が異様に肥大した「ボトルツリー」など、不思議な形態をした植物が多くあります。ソコトラ島には840種類もの植物が自生しており、そのうち300種以上がこの島の固有のものです。今回はその中でも特に注目し、番組の見所となっているのが「竜血樹」です。

ソコトラ諸島

Q:「竜の血」とは変わった名前ですが、どのような木なのでしょうか?

高さ3、4mほどの木なのですが、その枝葉はまるで剪定されたかのようにそろっていてキノコのような形をしています。「竜血樹」と呼ばれるのは、この木の樹脂が赤いことに由来しているのです。「シナバル」という竜血樹の樹脂の塊は医薬品として重宝され、古くはローマ軍が戦闘で傷を負ったときに止血剤としてシナバルを塗り、その傷を癒したとされています。また、シナバルは塗料や顔料の材料としても使用され、島の貴重な産物でした。