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石渡ディレクターインタビュー

Q:ソコトラ島にそのような独特な固有種が多いのは、なぜなのでしょうか?

ソコトラ諸島

A:2300万年から500万年前、地殻変動によりアフリカ大陸から切り離されたとされるソコトラ島には、元々アフリカと同種の植物が多かったのです。しかし、アフリカ大陸では砂漠化が進み、植物が絶滅してしまいました。一方、ソコトラ島はこの地域に吹き込む、湿気を含んだモンスーン(季節風)の影響で霧が発生し、植物が育つだけの水分が保持されていました。そのおかげで、砂漠化することなく、今日まで生き残ったものが固有種となったのです。また、ソコトラ島へ吹き込むモンスーンは、強烈なため、植物はその風に負けないようにするため全体的に背が低く、最も高いものでも5mほどしかありません。草も葉が固くなった種が多く生えているのが特徴です。今回の最大の見所である竜血樹のほかにも、漢方薬や香料に使われる「乳香(にゅうこう)」が採れる木など、他では見られないような貴重な植物の映像が満載なので、ぜひご覧ください。

Q:植物のほかに、番組の見所は?

A:四方を海に囲まれる島だけあって、綺麗な砂浜の美しい自然の映像が見所の1つです。その砂がモンスーンで舞い上がり砂丘になっている場所があちこちに見ることができます。また、島の内部も人の手がほとんど入っていないので、その自然そのままの風景を楽しんでいただけると思います。

ソコトラ諸島

Q:最後に、番組をご覧になる方へメッセージをお願いします。

ソコトラ島の竜血樹は、あと30年で絶滅するという説もありますが、島の中央に位置するハギエル山の中腹にまだまだ生い茂っており、竜血樹の宝庫といった感じです。その今の環境をそのままの形で、いつまで保全できるかが今後、世界遺産として課題になってくるでしょう。まずは、ソコトラ島という貴重で不思議な植物が自生する島のことを知ってもらい、興味を持っていただくことが大事だと思いますので、ぜひ番組をご覧になっていただきたいですね。

世界遺産の歩き方
日本からイエメンへ行くには直行便がないため、エジプトやサウジアラビアを経由する必要がある。
ソコトラ島は、まだ観光開発があまり進んでおらずホテルの数も多くない。食事は羊、山羊とマグロなどの魚が中心。5、6月は非常に強いモンスーンが吹き荒れ、12月から2月にかけては雨が多い。
観光なら天候が安定するそうした季節を避けるのがお勧めだ。