特集

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

日下ディレクターインタビュー

Q:やはり現地の寒さは過酷なのでしょうか?

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

そうですね。グリーンランドの西側沿岸部に位置するイルリサットは北緯69度で北極圏のため非常に寒さが厳しく、私たちが撮影を行った3月でも氷点下20℃まで冷え込むこともありました。辺りは一面の雪で寒々としていますが、町には非常にカラフルな家々が建ち並んでおり、雪の白とのコントラストはとても美しい景観です。しかし、町を案内してくれたタクシードライバーのピアーナさんに教えられてよく見てみると、土台が剥き出しになって傾いている建物がありました。タクシーで走っていても道路が大きく波を打っているのを感じられ、ガードレールも歪んでいました。ピアーナさんは「こんな現象が起るようになったのはここ数年のこと」だと言います。

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

Q:なぜそのような現象が起っているのでしょうか?

気候変動でイルリサットの町の土台となっている永久凍土が融け、地面が陥没しているからです。氷河の流れは速くなり、崩れ落ちる氷の量も増えて、氷河と海の接する部分は7年間で13kmほど内陸側に移動しました。ヘリコプターで氷河の奥地まで撮影したいと考えていたのですが、ヘリコプターが着陸できる地点も後退していたために断念しました。取材した漁師のリンゴさんによると、アイスフィヨルドでの漁の際、融けて薄くなった氷が犬ぞりの重さで割れ、海に落下する事故も起きているそうです。日本から遠く離れた氷に覆われた島、グリーンランドは今一番地球でデリケートな場所になっています。地球規模ではわずかな変化に見えますが、この町では毎日の暮らしの中に大きく影響が現れてきているという現実があります。

Q:最後に番組をご覧になる方へメッセージをお願いします。

ヘリコプターから撮影した氷河の内陸部の映像は、一見するとヒダ状の氷が連なっているようですが、真上から見下ろすと、巨大な氷の壁一枚一枚が鋭く尖り、谷底深くえぐれています。この自然の大きな力を感じる映像に注目して観ていただきたいですね。

イルリサット・アイスフィヨルドの観光の拠点となる町、イルリサットには、「ホテル アークテッィク」と「ホテル アイスフィヨルド」の2軒のホテルがある。「ホテル アークテッィクはデラックス、ホテル アイスフィヨルドは標準的な観光ホテル。僕たちが泊まったのはもちろんホテル アイスフィヨルド(笑)。こちらでも部屋は十分広くて快適でした」と日下ディレクター。世界の著名人ご用達のホテル アークテッィクには、アルミ製のイグルー(イヌイットの住居の一種)にはアイスランドのアーティスト、ビョークも宿泊したことがあるとのこと。