特集

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

日下ディレクターインタビュー

犬ぞりで駆け抜ける氷の世界

日本の6倍の面積を有する世界最大の島、デンマーク領グリーンランド。北極圏に位置するこの島には"氷の芸術"と呼ばれる世界遺産、「イルリサット アイスフィヨルド」があります。無限にも思える氷の大地。今回は、この世界遺産を犬ぞりとヘリコプターを駆使し、陸、空の両面から取材してきた日下ディレクターに、氷山の誕生と永久凍土の上に暮らす人々、そして彼らに迫る危機について話を聞きました。

犬ぞりで駆け抜ける氷の世界地図

Q:イルリサット アイスフィヨルドとは具体的にどのようなものですか?

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

通常のフィヨルドとは、氷河が大地を削り取った隙間に海水が流れ込み形成された入り江のことです。この氷河が削り取った隙間が氷で埋め尽くされているために、「アイスフィヨルド」と呼ばれるのです。イルリサット アイスフィヨルドの総面積は4024平方kmにものぼります。一年中氷と雪で覆われ、海と陸地の境界線がなく、まるで氷の惑星といった印象を受けます。ここは年間350億トンもの氷山を生みだす地です。氷山が誕生する瞬間の迫力はすさまじいですよ。

Q:氷山の誕生について詳しく教えてください。

氷山が誕生する場面は番組の見所の一つです。イルリサット アイスフィヨルドのヤコブスハン氷河から厚さ1000mもの巨大な氷がうねりながら分離して氷山となる瞬間は、視覚、聴覚ともに圧倒されます。ここで氷河から割れ出た氷山は1年ほどかけてフィヨルドを漂い、大西洋へと流れていきます。タイタニックが沈没する原因となった氷山もここから流れ出たものだと言われています。タイタニックの船員は、20mほどの氷山に衝突したと証言していますが、実は海面上に出ている部分はごく一部で、氷山の全体の90%は水中に隠れているのです。以前私は、別の取材で大西洋の氷山を撮影していた際に氷が割れて崩れる場面に遭遇したことがあるのですが、本当にスペクタルでしたね。