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イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

日下ディレクターインタビュー

Q:今回の取材で苦労したことはどんなところでしょうか?

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

現地に暮らすイヌイットの人々と一緒に犬ぞりに乗って撮影したとき、見渡す限り雪と氷の世界で、木などの目印になるようなものがなく、距離感がつかめなくなってしまいました。真っ白な大地の中を犬ぞりが移動しているシーンを、近くに見えた山から撮ろうと登りだしたのですが、距離を見誤っていて思いのほか遠く、雪が深くて思うように進めない上、足場が崩れる不安と戦いながらの撮影で大変だったのを覚えています。

イルリサット アイスフィヨルド 氷山ひしめく 極北の海

Q:犬ぞりに乗った感想を教えてください。

カナダやアラスカの犬ぞりは馬車と同じように犬を縦に隊列させますが、グリーンランドの犬ぞりは氷の上を開けた場所を走るため、犬を扇形につなぎます。1つのそりに、体重が30kgもある大型犬を約20頭もつなぐので、実際に乗ってみるとかなりスピードを感じました。町と町をつなぐ道がないグリーンランドでは犬ぞりは、重要な交通手段なのです。撮影拠点となった町のイルリサットでは人口とほぼ同数の約4000頭の犬が飼われているそうです。

Q:現地の人々はどのような暮らしをしているのでしょうか?

イヌイットの人々の生活は氷河と深く関わっています。かつては商業捕鯨が盛んで、食用や鯨油が採取されていましたが、現在の生業は漁と狩りです。漁師は犬ぞりでアイスフィヨルドの中に入り、氷の薄い部分に穴を開けてカレイのような魚を獲っています。また、氷山の下にはアザラシの餌となる小魚が多いため、アイスフィヨルドはアザラシを捕らえるには絶好の場所です。アザラシは彼らの生活には欠かすことができません。貴重なタンパク源というだけでなく、剥いだ皮は防寒性が高く、コートやブーツに加工され重宝されています。アザラシがいたから彼らはこの極寒の地で暮らすことができた、と言っても過言ではないでしょう。