特集
アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画〜闇に浮かぶ神秘の絵〜
谷ディレクターインタビュー
Q:アルタミラ洞窟と周囲の洞窟の壁画は、同じような絵なのでしょうか?

アルタミラ以外の洞窟の壁画は、シンプルで単色のものが多いです。例えば、鹿の輪郭だけや赤一色で塗りつぶしていたりします。それに対して、アルタミラ洞窟の壁画はさまざまな色を使っています。この絵を見てピカソは「このように描くことは誰にもできない」と絶賛したそうです。アルタミラ洞窟の中には多数の壁画がありますが、実はそれの半分ぐらいは一人の人物が描いたのではないかという説があるのです。筆跡鑑定のような部分チェックを丹念にした研究家がいて、その結果まず間違いないだろうという話です。
Q:例えるなら"クロマニヨン人のダヴィンチ"がいた?

そうですね、1万4500年前の天才画家と言えるでしょう。基本的に洞窟の中に絵を描くことができたのは、集団の中で絵が上手い人物だけだったと考えられています。なぜなら、残っている洞窟壁画に下手な絵はほとんどないからです。天才だけが洞窟の中に入って絵を描くことを許されたのではないでしょうか。そんな話を番組では紹介したいと思っています。またクロマニヨン人というと、文明も文字も持たない原始的な人たちというイメージがあるかもしれませんが、今回の洞窟壁画を見てもらえれば印象が変わのではないでしょうか。壁画以外にも、モリや投槍器などの出土品から、クロマニヨン人が十分賢かったことが伝われば、と思います。
Q:最後に番組をご覧になる方へメッセージをお願いします。
今回の撮影ではハイビジョンで壁画を捉えているので、間近で見たように細部までご覧になれます。公開されている壁画の前には柵があるので、現地に行っても、番組の映像ほど近くでは見られません。クロマニヨン人が描いた壁画のクローズアップという貴重な映像を、ぜひお楽しみください。
世界遺産の歩き方
アルタミラ洞窟から2kmほどのところにある、サンジャーナ・デル・マルは有名な観光地。フランスの文豪、サルトルが小説の中で「スペインで最も美しい村」と書いたように、石畳などの趣のある中世の町並みが残っている。「今回の取材では、アルタミラ洞窟があるカンタブリア州の州都サンタンデールに宿泊しました。カンタブリア州のコミージャスには、スペインを代表する建築家、アントニ・ガウディによるエル・カプリッチョという建物がありますので、立ち寄ってみてはどうでしょうか」と谷ディレクター。またサンタンデールは港町なので、鰯や海老などの海産物が絶品。「都会のバルセロナより自然が残っていて、食べ物がおいしくて気持ちいい街ですね」とのことだ。