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アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画〜闇に浮かぶ神秘の絵〜

谷ディレクターインタビューアルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画〜闇に浮かぶ神秘の絵〜

スペインの世界遺産「アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画」は、先史時代に人類が洞窟の岩肌に描いた芸術作品です。動物を躍動感たっぷりに描いた彼らの傑作の数々は、現代人の心も激しく揺さぶります。今回は、実際に洞窟へと入ってその壁画を撮影してきた谷ディレクターに、有史以前の名もなき画家について話を聞きました。

洞窟壁画とクロマニヨン人

洞窟壁画
1879年にアルタミラ洞窟の壁画が偶然見つかって以来、フランスのラスコー洞窟やショーヴェ洞窟など、次々と発見されてきた。これらは、旧石器時代に、洞窟の中に描かれた壁画の遺跡だ。
壁画を描いたのは、クロマニヨン人とされている。

クロマニヨン人
クロマニヨン人は、およそ4万年前にヨーロッパにやって来た人類の先祖で、洞窟壁画だけでなく優れた装飾骨角器や精巧な石器などを残していることがわかってきた。
ただし、彼らや壁画については、有史以前のことだけに不明な点も多くある。

Q:今回は、アルタミラ洞窟のどのようなところを取材したのでしょうか?

アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画〜闇に浮かぶ神秘の絵〜

この世界遺産は、正式には「アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画」と言います。もともとはアルタミラ洞窟だけで登録されていたのが、2008年に拡張されて周辺にある17の洞窟もその範囲に含まれるようになりました。今回は、17個中、4つの洞窟で撮影許可が出ました。4つの内の2つは一般の人が見学できないところまで入れさせてもらえました。ただしアルタミラ洞窟自体は、保存のために現在は公開されていないので、博物館にあるレプリカを撮影しました。レプリカとはいえ、洞窟の岩肌を再現し、さらに当時と同じ技法で本物そっくりに作られたものなので迫力があります。

アルタミラ洞窟と北スペインの洞窟壁画〜闇に浮かぶ神秘の絵〜

Q:実際に取材した洞窟はどのような場所でしたか?

壁画は普通、誰かに見てもらうために人目につくところに描かれていることが多いですが、今回取材した壁画の多くは洞窟の数十メートル奥の、さらに人がひとり入れるかどうか、というほど狭い場所に描いてあるのです。

Q:なぜそんな場所に描いてあるのでしょうか?

かつての定説だと、狩りを成功させるために狩猟の対象である動物を描いたと言われていたのですが、最近では動物が信仰の対象であったという説も考えられています。つまり、人に見せるところに描いていないのは、信仰などの意味があるということに繋がるので、宗教的な意味合いを持って描いているのではないかということです。