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ナイル川の源流へ ルウェンゾリ山地国立公園

小澤ディレクターインタビュー
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小澤ディレクターインタビュー

Q:その10日間はどのような行程だったのでしょうか?

ナイル川の源流へ ルウェンゾリ山地国立公園

ガイドとポーターを含めて30人ほどのバコンジョの人たちと一緒に行動したのですが、車も馬も入れない土地なので、全行程徒歩でした。ルウェンゾリ山地の標高約3000メートル以下のエリアには、熱帯雲霧林が広がっています。雲霧林とは、常に霧に覆われた湿度が非常に高い山地にできる森林で、幹に苔がびっしりと生えた木々、蘚苔林を見ることができます。湿度100パーセントなので服が濡れるとまったく乾かないのです。宿泊する山小屋には電気も水道も通ってないので、もちろん風呂もシャワーもありません。そのようにしながら道なき道を進んでいくと、やがて不思議な光景が広がる湿地帯に入りました。ジャイアント・ロベリアやジャイアント・セネシオといったアフリカ特有の、高さ10メートルにもなる巨大な高山植物が群生していて、まるでSFで描かれる別の惑星のような奇妙な景色なのです。さらに上っていき、標高が5000メートル近くなると植物はなくなり岩だけとなります。そしてその先の山頂付近にたどり着くと、広大な氷河が目の前に広がるのです。その氷河が、今回のテーマであるナイル川の最初の1滴が流れ出すと言われる場所なのです。

Q:源流へ到達したときの感想は?

ナイル川の源流へ ルウェンゾリ山地国立公園

実際にマルガリータ峰の氷河に着いたときは、よくここまで来たなあ、と思いました。それと同時に、かつての探検家たちは装備がまだ充実していない時代だったにもかかわらずこんなところまで到達したことに感心しました。2世紀の地理学者であるプトレマイオス・クラウディオスが作成した地図に、ナイル川の水源のある「月の山」が描かれていました。19世紀当時、大河の源流の発見者になるのは大変な名誉で、冒険家たちは伝説の「月の山」を目指してナイル川上流の未開の地へ踏み込んでいっていたのです。そして1889年に、イギリス出身の冒険家、ヘンリー・モートン・スタンリーがヨーロッパ人として初めてルウェンゾリ山地を発見しました。今回の取材は、かつて冒険家たちが通っていった足跡を辿る旅でもありました。途中、スタッフが軽い高山病になったためにそのスタッフを下山させざるを得ないなどの事情があって、氷河での取材は時間が限られてしまいましたが、体を張って氷河にチャレンジして撮影をしてきました。