特集

「失われた世界」を冒険する!カナイマ国立公園

「失われた世界」を冒険する!人々にイマジネーションを与えるカナイマの大自然

南米ギアナ高地の中央にあるカナイマ国立公園(ベネズエラ)は、テーブルマウンテンと呼ばれる切り立った台地がいくつもある独特な地形で有名な自然遺産です。その人を寄せ付けぬ断崖絶壁で囲まれた地域は、人々の未知の世界への想像をかき立ててきました。2週にわたってお届けする「THE世界遺産 カナイマ国立公園I・II」の放送に先駆け、この特集ではテーブルマウンテンを舞台にしたSF小説「失われた世界」の冒険譚を辿りながら、番組で紹介するギアナ高地の真実をご紹介していきます!

ホームズの生みの親が夢見た冒険の世界

アーサー・コナン・ドイル

「シャーロック・ホームズ」シリーズで知られる作家、アーサー・コナン・ドイルがSF冒険小説の作品を数多く残しているのをご存じでしょうか。

「失われた世界」は、そのドイルの代表作の1つです。絶壁で囲まれ外界から断絶された南アメリカの台地に恐竜をはじめとする古生物が生き残っていると主張する古生物学者のチャレンジャー教授、そのライバル学者であるサマリー教授、冒険家のジョン・ロクストン、ロンドンの新聞記者エドワード・ダン・マローンらが共に南米のアマゾン川上流にある古生物の生き残りを探しに行くというストーリー。その物語の舞台となるのが、南米のジャングルの奥深くにある断崖絶壁で囲まれた台地、テーブルマウンテンです。1912年に発表されたこの小説は、その後、映画にもなり、人々にギアナ高地の不思議な魅力を伝えるのに大きな役割を果たしました。

「THE世界遺産 カナイマ国立公園I」でご紹介するロライマ山は、ドイルが「失われた世界」のモデルにしたと言われるテーブルマウンテンの1つです。小説の中で、その山は次のように表現されています。

The Lost World
“この前の手紙を書き終えたとき、わたしは、ちょうどわれわれが果てしもなく長い断崖のつらなりから十キロ以内のところにいる、と報告しておいたが、この断崖こそ、疑いようもなくチャレンジャー教授のいっていた、あの台地のへりをめぐって立つものにちがいなかった。崖の高さは、近づくにつれて、ある場所では教授の語っていたよりはるかに高くさえ見えはじめ??そう、場所によっては少なくとも三百メートルはありそうにも見える??そして、その崖の奇怪なしまもようは、わたしの感じでは、玄武岩質の隆起の特性を示したものにほかならなかった”
(アーサー・コナン・ドイル 東京創元社 滝口直太郎訳 以下同じ)

実際のロライマ山は、標高2810メートル、周りを囲う崖の高さは300メートルどころか、1000メートル近くになる部分もあります。いまでこそ登山道が切り開かれていますが、非常に険しく、人を容易には寄せ付けない地形であることには違いありません。実は、ドイル自身はギアナ高地へ行ったことはありませんでした。19世紀にロライマを探検した植物学者で冒険家のエバラード・F・イム・トゥルンの講演会を聴講したドイルは、その話に刺激を受け、「失われた世界」を執筆したと言われています。

その大自然にはクリエイターの想像力をかき立てるものがあるようです。ドイルの作品以外にも、古今東西のさまざまな映画や小説、ゲームなどにギアナ高地がモデルになった舞台が数多く登場します。