特集

知床〜大自然の繊細美と生命の真実に迫る〜

西澤ディレクターインタビュー

Q:具体的にはどのようなところを掘り下げているのでしょうか?

知床〜大自然の繊細美と生命の真実に迫る〜

力を入れているところはたくさんあるのですが、あえて挙げるのであれば、やはり水中カメラを使っての映像でしょうか。今回の番組で特に注目していただきたいのは、夜の流氷を水中撮影したシーンです。その撮影では「ハロークライン」を撮ることができました。ハロークラインとは、川から海に流れ込んだ淡水と海水が層に分かれてできる境界面のことです。普通の海では波があるので起こらない現象ですが、流氷が岸に漂着した知床の海だからこそ見ることができる不思議な光景が撮影できました。ほかにも、北海道大学の水中ロボットカメラによる調査に同行し、わずか数キロで浅瀬から深さ1000メートルの深海へ急激な落ち込みを見せる根室海峡海底の様子をご紹介できることになりました。こちらも観ていただきたい映像です。

Q:陸での撮影はいかがでしたでしょうか?

知床〜大自然の繊細美と生命の真実に迫る〜

知床を代表する陸の動物であるヒグマももちろんご紹介します。生まれて2カ月の子グマが冬眠を終えて穴から出てきたシーンや、さらに、授乳するヒグマの親子の様子もこれまでに出会った貴重なシーンの中から選んで用意しました。実は、知床が世界遺産へ登録される際にこのヒグマの存在が後押しとなったのです。知床の自然の特徴の1つとして、ヒグマを通じて海の生態系と陸の生態系の物質循環が行われている点が挙げられます。ヒグマが川を遡上してきたサケやマスを食べるというだけでなく、さらにヒグマの食べ残しや糞によって魚に含まれる窒素が森に撒かれて植物が育つ栄養素になっていることが科学的な調査でわかってきました。こうした背景を知った上でヒグマを見ていただくと、また違った知床の面白さを感じていただけるかもしれません。