特集

サウンドエンジニア土方裕雄さんの5.1ch サラウンド講座

インタビュー

Q:現場での録音方法というのもやはりステレオとは違うのでしょうか。

サウンドエンジニア土方裕雄さんの5.1ch サラウンド講座

後ろ側の音を録音する点は違いますが、収録スタイルは基本的には同じで、カメラが回っている間は同時録音しています。
でも、360度すべての方向の音を拾うわけですから余計な音まで拾ってしまうというのもサラウンド録音の特徴です。撮影に関わるクルーは「サラウンド録音をするんだ!」という気構えで臨んでくれているので問題ないのですが、時には100m先の車の音や、観光客の話し声が入ってしまう事も。そういう弊害が生じた場合は、音だけを別に収録する時もあります。

あとはその場所の状況を感じさせるようなバックグラウンドノイズも重要な録音ポイントのひとつ。遠くの音も拾えるからこそ、例えばフィールドにいると姿は見えなくても、動物の声が遠くから聞こえたりします。
その音をミックスの段階で風景のみの映像にのせると、「見えてはいないけど感じられる」という、現場でこそ体感できるリアルな臨場感を表現できるので、それ用に録音したりもしますね。他にも、雨の音や夜の熱帯雨林ジャングルで聞こえる虫の音など職業経験上、後で困らないようにとりあえず様々な音を録っておきます。

Q:常に気を付けている事とは?

サウンドエンジニア土方裕雄さんの5.1ch サラウンド講座

やはり一番気を付けているのは、カメラマンの動きをなるべく妨げないようにするという事。
この番組では、毎回メンバーは、必要最小限の人数で協力し合いながら世界中を渡り歩き撮影しています。
そんな中、サラウンド録音の場合は先ほどもお話しした通り機材が特別なため、普通とは違う点がいくつもあります。例えばマイクが6本ありますが、それに繋がるケーブルも6本では手間がかかりますし、持ち運びにも苦労します。なので、マルチケーブルを作って1本で受け渡しができるよう改良するなどいかにコンパクトにできるかということは考えています。機材の重量に関しても、昔に比べるとかなり軽くなってきました。まだレコーダーとミキサーを合わせると10kgありますが、今でも十分アフリカやアマゾンなどのフィールドに出られていますからね。
もう少しするとより良いクオリティを搭載した軽量タイプが登場しますから、そうなったらさらにフットワークが軽くなって活躍の場を広げられるのではないかと思います。