作品紹介
アングルのアトリエからイタリア旅行まで
師アングルが1834年にフランス・アカデミー院長としてローマへ旅立った後、シャセリオーは、ゴーティエやネルヴァルらボヘミアン芸術家たちと交流しつつ、新たな芸術表現を探求したロマン主義の動きを吸収していきます。ここでは、1836年のサロンに初入選した時期からイタリアの文化・芸術や自然に触れる機会となるとともに師との決裂ももたらした1840-1841年のイタリア旅行までの作品を見ます。
Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Jean-Gilles Berizzi / distributed by AMF アングルがローマへ旅立ち、パリに残された16歳のシャセリオーが手がけた自画像です。すでに師の端正な様式を想起させる成熟した画風の一方で、顔の右半分を覆う深い陰影がロマン主義的な内なる情熱をにじませています。エキゾチックな顔立ちに複雑な思いがあったともいわれるシャセリオーは自画像も写真もほとんど残しておらず、貴重な1枚です。
Photo©RMN-Grand Palais (musée du Louvre) / Michèle Bellot / distributed by AMF
《黒人男性像の習作》 油彩・カンヴァス 54.8×73.5cm 1838年 モントーバン、アングル美術館
Photo©Montauban, musée Ingres/cliché Guy Roumagnac
《サタン》 黒鉛 16.8×21.5 cm モントーバン、アングル美術館
Photo©Montauban, musée Ingres/cliché Guy Roumagnac 《キリストの誘惑》(未制作)を構想していたローマのアングルがシャセリオーに描かせた油彩習作と、アングルの細かい指示が入った素描です。シャセリオーはここで、ジェリコーのモデルでもあった黒人モデルのジョゼフの体を力強く描き出しつつ、背景の鮮やかな青空や落下を目立たせる岩、そしてモデルの個性と怒りの表情を強調した頭部といった独自の表現を付け加えて、単なる習作以上の魅力を生み出しています。