新時代の心臓手術─ロボット手術とは?|日曜劇場『ブラックペアン』

SURGICAL SYSTEM

新時代の心臓手術─ロボット手術とは?
第5話から登場する手術支援ロボット・ダーウィン(※)
最先端の“ロボット手術”について、
監修先生のお話を基に紐解いていきます。
(※)高精度の3D内視鏡を備え、超精密な手術を行う実在の内視鏡下手術支援ロボット・ダビンチが劇中では「ダーウィン」という名称で登場します。

vol.1ロボット手術のパイオニア・渡邊 剛先生インタビュー

本作の医療用ロボット監修としてご協力いただいている渡邊剛先生は、ニューハート・ワタナベ国際病院総長であり、日本ロボット外科学会理事長も務める“心臓ロボット手術”のパイオニア的存在。
今回はそんな渡邊先生に、ロボット手術について語っていただきました。
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先生がロボット手術をやろうと思ったきっかけは?

研究をしていく段階で内視鏡に興味がありました。外科的な進化は傷が小さくなっていくことで、突き詰めていくとカテーテルとか内科の領域にいっちゃうんですよね。傷を小さくしていくというプロセスの中で内視鏡というのは非常に重要なのですが、もともと心臓外科にはなかったのです。そのため、心臓外科の世界に内視鏡を入れていけたらと20年以上前から考えていました。それがこの“ロボット”という技術を使ってようやく実現できたという気がします。

ロボット手術で一番大変なことは?

ロボット手術は両手とカメラしかない、助手がいない手術なんです。「ワンマンサージェリー」というのですが、これだと一人で二役、三役をこなしていかなくてはいけない。今までの手術とはまったく手術の考え方が変わるんです。しかも内視鏡なので、時間制限もある。この大きな壁を越えるまでには、やはりかなりの苦労はありました。心臓を止めてからもう一回心臓を動かすまでというのは、行って帰ってくる道のりがありますから、戦争で言うなら、戦闘機で戦場に行って燃料を考えながら爆撃をして、必ず空母に着艦しなければいけない。燃料の重さや玉の数も考えながら帰ってくる作業なので、その点のストレスはありました。その計算がなかなかできなくて苦労したのですが、だんだん自分の技術が上がっていくことで自分の中で出来るようになったんです。

実際にロボット手術でできること、できないこととは?

このドラマでやっていることが実に端的に表されている気がします。渡海先生がやるとロボットを使おうが、使うまいがうまくいくじゃないですか。まさしくその通りだと思います。下手くそがロボットを使ったからといってうまくなるわけではないし、早くなるわけではない。下手な人が使うともっと危険なことが起こるということをドラマを見ている人はなんとなく気がついているんじゃないかと思います。ですから機械を扱う以上は、カーレースの最高峰であるF1と同じで、最後は人が運転して、人がコントロールしていくものっていうのはAIがいくら進歩しても変わらないと思います。今できる手術というのはロボットの利点を活かした体の深いところの細かい手術を得意とするので、僕らの領域でいうと弁膜室の手術だとか、バイパス手術とかですね。人間の目よりもさらに細かいところができるところにメリットあるんじゃないかなと。この先AIやビッグデータが入ってくると、ロボット手術がもっと違う方向にいくのは間違いない。だけど、今のロボットはあくまで人間が操作するものですから、F1マシンみたいなものです。よく例えられるのですが、いくらお金があってもドライバーの腕がついていかないとマシンのエンジンさえかけられないですよね。F1パイロットという特殊なドライバーになることはとても難しいですよね。素質のある人をきちんとF1ドライバーになれるようにしていく教育とか、そういうことに力を入れていく段階に入っていく。そのためにも免許を取ったらすぐに運転ができるということではなくて、ちゃんと素質のある人に伝達していくことが重要です。そして患者さんもロボット手術を受けることになったら、本当にちゃんとうまい人がやってくれるんだろうか、資格がある人がやってくれるのだろうかとちゃんと見極めて手術を受けていくことが大事になってくると思います。

ロボット手術は今後どういう方向に向かっていくと思われますか?

今年の4月1日から心臓弁膜症に対してロボット手術の保険適用が始まりました。現在日本に導入されているロボット手術の機械自体はまだ300台くらいです。僕らは過去13年間で460人くらいの患者さんの心臓手術をロボットやっています。ダビンチのシェアでいうと、現在は当病院が90%以上ですが、これからどんどん増えていくことになると思います。
心臓の場合はいろんなロボット手術ができるようになっていくと思いますし、他の領域もロボットによってできることが可能になると思います。今はアメリカのメーカーのロボットしかないですが、今後は疾患別のロボットというのも出てくるし、遠い将来はAIとかビッグデータを使って、ボタンを押せば徹夜明けの僕が手術するよりも上手に手術をできるような時代がくるのではと思います。

本作でロボット手術を扱うことについて、どのように思われますか?

保険適用も始まり、これから広まっていくであろう中でロボット手術を取り上げていただくからには、ドラマを見ている方がロボット手術に対して「非常に便利でいいものであり、決して危険なものではないんだ」というイメージで捉えていただけたらいいなと思っています。ただロボット手術の中でも特に心臓の手術は難しいのです。時間が限られているし、一歩間違えたら大出血してしまう。だからドラマで取り上げていただくにも、正しく広がっていかなければいけないなと思いました。ドラマですから、当然ドラマらしい部分が要求されるところもあると思います。ただ基本的にロボットは人間が操作するもので、ボタンを押したら全部やってくれるものではないのです。そこのところを正しく伝えていただけたらと思っています。このドラマをきっかけに、広く正しく知ってもらって、一人でも多くの方にいい手術を受けてもらいたいです。

外科医・渡海を演じる二宮さんの印象はいかがですか?

外科医は腕が良くないと存在する意味がないわけですが、超絶技巧の外科医として渡海の言葉や態度がよく描かれていると感じます。演じている二宮さん自身にも、きっとそういう才能があるのでしょうね。撮影前にダビンチの扱い方を直接教えさせていただきましたが、とても飲み込みが早かったです。また左利きということで、私も左利きなので非常に親しみを感じました。

PROFILE

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ニューハート・ワタナベ
国際病院総長
日本ロボット外科学会
理事長
渡邊わたなべ ごう
1958年、東京生まれ。
心臓血管外科医、ロボット外科医 (da Vinci Pilot)、心臓血管外科学者、医学博士、(心臓血管外科専門医、日本胸部外科学会指導医)等々。
ドイツで最年少心臓移植執刀医として実地の手術を担当、2年半ドイツで活躍。
"天才心臓外科医""天使の手"と称され、現在外科医の世界で圧倒的名声を得て、その至高かつ芸術的と称される手術で世界のベストドクターに選ばれる。

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