テレビ観察プロジェクト









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月刊民放5月号 月刊民放5月号掲載より、その1
特集 メディアリテラシー
「民放連・NHK共同企画番組 子どもとテレビ」を制作して
TBS編成考査局 番組考査部長 大野照夫

どんな番組?
 『全国初!テレビ観察子どもプロジェクト21世紀のテレビはこうなってほしい!!』

 何と仰々しいタイトルとお感じの方も多いでしょうが、正真正銘“子どもが主役”となってテレビを観察し、社会へ提言しました。
 主役となった子どもたちは高知市立旭東小学校の6年生103人全員。プロジェクトリーダーは未来教育デザイナー・鈴木敏恵先生(千葉大学教育学部非常勤講師)と、旭東小学校の川崎ひろか先生。

■テレビって何だろう…
 初めてカメラを回した昨年12月8日、鈴木先生は子どもたちにこう問い掛けます。

 「テレビって何だろう!?

子どもたちは、皆キョトンとした目付きで戸惑った様子でした。日本人は、平日にテレビを平均して3時間25分見ています(「2000年国民生活時間調査」NHK放送文化研究所)が、それは空気のような存在で、子どもたちはテレビについて考えたことがなかったからです。かくしてテレビ観察が始まりました。子どもたちの観察日誌は事件報道へ、バラエティー番組へ、CMへ等々、あらゆるジャンルに広がりました。そこには私たちが遠い昔に置き忘れてしまった、みずみずしい純朴さが率直に記されていました。朝の情報番組の占いコーナーで“今日のラッキー食材”や“ラッキーカラー”に「それって本当なのかなァ〜」と疑問を感じた子ども。事件報道でモザイクのかかる映像に「ならば撮らなければ!!」と言う子ども。その絵日誌を見て、“子どもはテレビをよく見ている、正面から見て、裏からも見ている”と驚きました。
■観察からテーマを決め、チーム作りへ
 観察で得たテレビへの問題意識・疑問を基に、チーム作りが行われます。体育館いっぱいに大きなパネルが並び、13チームが結成されました。それは子どもたちが今のテレビに感じ、これからのテレビに望む願いが結実したものでした。「みんなが心から楽しめる番組を作ってほしい」「暴力やいじめがないテレビ」「病気や体の不自由な人にやさしいテレビ」など、子どもたちのやさしい気持ちが込められています。こんなものもあります。未来テレビ研究チーム「いつでもどこでもテレビと話をしたい!」。その心は“有名人と無料で話したいから”。
 チーム結成の後、自分たちの願いが妥当なものか? どうしたら実現できるのか?調査のため校外へ飛び出します。

■情報リサーチ いざ!テレビ高知へ
 1チームは7〜8人。電話のかけ方を特訓し、自分たちでアポを取っていよいよ街へ。老人ホーム、保育園、市民会館へ、大人から小さな子どもまで、どんな番組を望んでいるのか? ニュースに何を感じているのか? などアンケート調査が行われます。皆初めての体験です。
 地元、テレビ高知は全面協力で子どもたちを受け入れました。夕方の看板番組『イブニングKOCHI』の取材からon airまで、子どもたちはカメラマンに、記者に、編集デスクに、あらゆる質問を浴びせます。
 橋本知事取材に同行した子どもたちは、最後に知事と握手。「もう手洗わん!!」と大喜びする一方、NHK記者出身の知事から「報道記者の心得」をしっかり取材するなど、感心させられました。
 社に戻った子どもたちは、追い込み原稿やVTR編集の素早さに目を見張ります。サブ、そしてニューススタジオで子どもたちは息をひそめてon airを見守ります。終了時、子どもたちから一斉に大きな拍手がわき起こりました。

■提言書づくり──発表会&総まとめ
 取材活動で得た情報の整理・まとめに、子どもたちは悩み考えます。パソコンを使ったデータのグラフ化には、高知工科大学のボランティアチームが協力してくれました。そして2月16日、後輩の4年生・5年生・保護者を前に校内発表会。翌日は高知市立自由民権記念館で、市民に向けた発表会も行われました。いつもなら、ここで取材は無事終了となるのですが、しかし、このプロジェクトはこれだけではありません。21世紀のテレビへの願いが込められた提言書はテレビ高知へ、NHK高知放送局へ、そしてTBSなどに届けられ、そのリアクション発表会が卒業を前にした最後の授業で行われました。各局の幹部が参加し、TBSからは報道局編集主幹の植田豊喜さん、キャスターの吉川美代子さんが、ビデオレターで子どもたちの願いに答えました。
 「アナウンサーはもっとゆっくり、口を大きく開けて話してほしい」との提言に、吉川キャスターは「私も同感、後輩の指導にこの提言を役立てます」。この返事に思わずうなずく子どもたち。「こうしたテレビ局との対話は、中学へ行っても続けてほしい」と植田主幹の励ましの言葉でプロジェクトは終わりました。
 正月を挾んで102日間。回したテープは187本。100時間近い映像が収められました。放送日は連休の4月30日(月)午前10時25分より。JNN各局で同時、もしくは後日放送され、NHK教育で5月26日(土)午前10時30分から全国放送されます。