今回は「写真療法」についてTBSラジオの澤田大樹記者が取材しました。
この「写真療法」というのは、写真を見るということよりも写真を撮ったり撮られたりして「元気を取り戻そう」というものです。
この「写真療法」の取り組みをしているのは東京在住の酒井貴子
(さかい・よしこ)さん(52)です。酒井さんは7年前から「写真療法」の活動を始め、以前は病院の緩和ケア病棟で患者の写真を撮っていて、5年前には「人権トゥデイ」で取材しています。
酒井さんが活動を始めたきっかけは、酒井さんご自身が健康診断でがんと診断されたことでした。精神的に落ち込んだときに、旅行で写真を撮っていると元気を取り戻したんです。そこで、この経験を他の人たちにも同じ体験をして欲しいということで活動を始めました。緩和ケア病棟の患者さんに好きな格好をしてもらって写真を撮ると本当にいい表情をするそうなんです。
「お化粧で元気を取り戻す」メイクセラピーのようなものですね。
そして、酒井さんはこの活動を子どもたちとやってみたんです。
長野県の子ども病院で入院している子どもたちにカメラを渡すと
やはり子ども達もみるみる元気になったそうです。
子どもたちに自由に写真を撮らせるのですが、どういった流れで行われるのか酒井さんに聞きました。
「今、基本としているのは1人1台デジタルカメラを持たせて、自由に30分ぐらい撮影してもらう。それを3枚ぐらいすぐプリントして、それをスクラップブッキングというクラフトしてその写真をきったり貼ったりして、かざりとともにアルバムに添えて、好きな言葉を自由に語ってもらうというプログラムなんです。」
「スクラップブッキング」というのは、酒井さんが行っている「写真療法」の特徴なんだそうです。
「スクラップブッキングは非常にアナログで手作りのクラフトで、写真を撮って貼り付けるところまでは一緒だが、写真をパソコンを通して一発で作品にするというのではなく、ゆっくり自分の手できったり張ったり絵を描いたりシールを貼ったり言葉を書いたりという非常に手作りのクラフトなんだけれども、それを取り入れたところ、子ども達のはまり方がかなり違ったんですよ。」
と酒井さんは話します。
写真を撮るだけじゃなくて、紙を切って貼り付けたり、絵を描いたり、シールを貼ったり工夫をこらすんですね。
「写真を撮影する場面なんですけれども、誰が指定するわけでなく子どもが自分で自由に撮っていいんだなと。撮った写真もスクラップブッキングっていって自分で加工する際も、写真の切抜きとか、デコレーションというか飾ったりすることも「こうやりなさい」と言われた事をするのではなくて、自分で好きなことをやっていいんだなということをわかってきているので、人にいわれて何をやるというのでなくて、許されて自分で何をやってもいいんだなっていう面で子供は成長してきたのかなと思います。」
と、「写真療法」を行っている、長野県立子ども病院の院内学級の柳沢英治先生は話します。
子ども達が積極的になる秘密は何なのか?
実は、「写真療法」のなかには写真を撮って自分を表現して元気になる「写真セラピー」の効果に加えて、色紙を切ったり貼ったりことには「色」による「カラーセラピー」の効果があります。切ったり貼ったりする作業そのものには「作業療法」の効果もあるんですね。つまり、いろいろな療法を一度にできてしまうということなんです。
元々別の「セラピー」として行われていたことがたくさん含まれていたんですね。
酒井さんはこうしたセラピー効果を広めようと「日本写真療法家協会」を4年前につくりました。
「日本写真療法家協会」では全国各地で「写真療法」を行うほか
この「写真療法」にどんな効果があるのかということを学術的に研究しています。
具体例としては諏訪東京理科大学の篠原先生という脳科学の研究者と
「写真療法が脳にどんな影響を与えるのか」について一緒に
研究して学会で発表しています。
会員の中にも、学校の先生やお医者さん、看護師さんなどもいらっしゃるそうで、
活動はどんどん広がっています。
最後に、これから「日本写真療法家協会」でやっていきたいことについて酒井さんはこう話しています。
「それから専門職として写真療法を実践できるような人材の育成ですそのために学術的なことを入れた学術講座を開催しようと思っています。最終的にはそこを修了して、実践を経てお仕事できる人材としての肩書きというか専門職の育成につなげたいと考えています。」
1枚の写真からいろんな可能性が広がっているんですね。