インタビュー
宇津井健さん(岡倉大吉役)
岡倉5人姉妹を支える大吉さん。まだまだ心配ごとは尽きませんが、そんな大吉さんを演じる宇津井健さんの、作品への向き合い方などを伺いました。
ぼくは4年前の第8シリーズからの参加ですが、これだけ皆さんに親しまれている役を途中からいただく、というのはきっと最初で最後の体験でしょうね。藤岡琢也さんという名優の後を受け継ぐんですから、もちろんプレッシャーもありましたが、尊敬する石井さん、橋田さんのお声がかりということで、大変名誉なことだと思っています。プレッシャーが大きいほど、向かっていくファイトが沸きますからね(笑)。
ただ、そのときの藤岡琢也さんの心中はいかばかりだったか…お亡くなりになったとき「病気もけがもせず、ぼくが必ず最後までやり遂げます」と墓前に誓いました。引き受けた以上は、藤岡さんが築きあげてきた「岡倉大吉」から、今はぼくの役にしたんだ、という自負はあります。
「渡る世間は鬼ばかり」に出演が決まったときというのは、妻が病で余命いくばくもない時だったんです。妻はこのドラマが大好きで、ぼくの出演した第8シリーズの第1話を病院のテレビで見て、「良かったわよ」と言ってくれたのが、とても心に残っています。
実生活では、ぼくには息子が一人で、娘というものを知らないのですが、男は味気ないですよ(笑)。岡倉家の娘5人というのも、心配は尽きないでしょうが、親からすると助かるんでしょうね。娘たちもきっと、親を拠り所にいていると思いますよ。
このドラマは人格向上の哲学書です。大吉は本当に懐が広くて、見習いたい人です。今回が最終シリーズですが、撮影が終わるまでに少しでも大吉に近づく、というのが最大の目標です。
ぼくは、演技には技術ではなく、その役者の生き様が出ると考えています。かつて「演技者は人格者でなくてはならない」と俳優座養成所で学びました。ですから、よき俳優になる前に良き夫、良き父を志しましたね。特にぼくは、そういう人格者や、いい人の役が多いですから、私生活でもそうであろうという目標を立てていたんです。でも、やはり俳優ですから、どんな役でもやらなければいけないんでしょうけれどね。このまま通していくか、そろそろ禁を破って、犯人役やちょっと危ない役でもやってみましょうか(笑)。でも、ご覧になっている方が、役と俳優を重ねてくださいますので、大吉を演じている間は、悪人の役はやりませんし、スキャンダルもなく、まっとうしたいですね(笑)。
それはあるでしょうね。ぼくも4歳で父が亡くなって、戦前ですから母は再婚もせずに、ぼくたち兄弟を育ててくれました。やはり母親は特別だと思いますよ。おかげでぼくも20代の頃から、年上の女性とばかりお付き合いしてきて、妻も半年とはいえ年上でしたし、明らかにマザコンでしょうね(笑)。
ぼくはプライベートでは、まったくと言っていいほど料理はしないのですが、卵料理が好きなので、料理所作指導の柳原先生にお願いして、卵焼き用のフライパンを買ってきていただいて使っています。でも包丁を持つところまでは、なかなか行かないですね(笑)。
実は、広く動けるように、厨房を少し変えてもらっているんです。大吉さんは料理人ですが、画面では味はわからないので、料理人の動き・「料理ぶり」を見せたいと思っています。
特に注文はありません(笑)。橋田先生と石井先生のお二人にいかようにもしていただきたいです。
いたことがありません!本当にいないんです。むしろ、『鬼』に会ってみたいですよ(笑)。皆さんもこのドラマをご覧になって、「自分のまわりはこんなに酷くないから、まあいいか」と感じていただいて、「次もまた見たいな」と思っていただけると嬉しいですね。