インタビュー

脚本・橋田壽賀子先生、石井ふく子プロデューサー

1年ぶりにお茶の間に帰ってくる『渡る世間は鬼ばかり』。
今回のテーマやみどころなどをうかがいました!

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ーテーマをお聞かせください

石井ふく子P(以下、石井):橋田さんとのお付き合いは50年くらいになります。皆さんがお生まれになる前からのお付き合いかもしれませんね。
今回の『渡る世間は鬼ばかり』3時間スペシャルは“夫婦”がテーマです。出演者もスタッフも協力して撮影に挑み、あたたかい作品に仕上がったと思います。
私も橋田さんも“家族のドラマ”を作り続けてきました。今回も、変わりつつある家族を大切に作り上げましたので、ぜひご覧ください。
橋田壽賀子(以下、橋田):テーマは石井さんが全部おっしゃったのであえて申し上げることはありません(笑)。私は現在93歳。仕事は90歳で辞めようと思っていましたが、『渡鬼』だけは書かせていただいています。それは本当に幸せなことだと思っています。『渡鬼』は時代と共に登場人物が成長するドラマですので、時代に合わせた社会問題を描いてこられたことも大変幸せに思っています。
この記者会見、2人で180歳超えなんですよね(笑)。90歳になってまだ仕事しているってびっくりですよね(笑)。石井さんなんて92ですよ。
石井:まだ92歳になってないです(笑)
橋田:9月1日がお誕生日ね、失礼しました。91歳ですね。93歳と91歳の記者会見です。(笑)
石井:(笑)

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ー今回、描きたかったこととは?

橋田:嫁姑ですね。ピン子ちゃん(五月)も、いつの間にか姑になりました。それから在宅医療の問題です。長子の旦那が在宅医療をやっていたり、弥生はお年寄りが集まる場所を作ってあげたいと考えたり。
夫婦の問題も書きましたね。勇が足を骨折し、五月が看病することになる。「幸楽」で仕事ばかりしていた夫婦が初めて向き合う。60歳を過ぎた夫婦の在り方を描いてみたいと思いました。また、葉子は夫婦で同じ仕事をしていても、別々のお客様の担当していた方がいざという時に便利だなとか。文子は同じ仕事して喧嘩して別れているとか。
とはいえ、私自身の意見なので、支持されるかどうかはわかりませんが(笑)

ーその時代の社会問題を描いている?

橋田:昔と今では、幸せの考え方が少し違いますよね。30年位前はお姑さんが力を持っていましたが、今は「長男とは結婚したくない」と言える時代。そういう意味では若者たちの考え方もお姑さんの考え方も違ってきているのかなと。
あとは、介護の問題。仕事を辞めて自分の親の面倒を見て、親が死んだあとにやることがない中高年がいっぱいいるんじゃないかなと。そういう時にどうするべきか……在宅医療の問題は、これからもしっかりと書いていきたいなと思っています。
石井:5人の姉妹がそれぞれ家族を抱えている。橋田さんは在宅医療の問題を書いたり、老人たちの憩いの場である喫茶店を作るというアイデアを思いついたり、それぞれの年代に欠けているものをお書きになっている。私なんか、歳を数えるとね、何もできない。
橋田:私は歳を表に出してサボることを考えていますから(笑)。93歳だからできません!ということにしている。ずいぶん違いますでしょ?石井プロデューサーと(笑)。
石井:(笑)。私は今やらなきゃいけない問題がいっぱいあると思うんです。だからもっと作品を作りたい。私たちの時代とはずいぶん変わってきている家族というものを考えていきたい。私も橋田さんも一人っ子なので、5人姉妹の家族の問題を客観的に見届けていきたいなと。また、心のあるドラマを作り続けていきたいですね。人はいっぱいいるけど人間がいない、と言われていますが、人間というのは人と人との間の心だと思うんです。相手と向き合うこと。最近は機械と向き合って、家族としゃべったり、喧嘩したりする機会がない。そういう意味で『渡鬼』はあたたかいドラマだと思います。
橋田:あんなしゃべったら壊れちゃうかもしれないけどね(笑)
石井:しゃべらない方が怖いんですよ。何を思っているかがわからない方が怖い。
橋田:今は、SNSやメールで会話していますもんね。
石井:メールじゃ短いから気持ちは分からないと思いますけどね…。

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ー最初の放送が平成2年。来年は元号が変わります。平成時代を通して家族の在り方などを描いてこられた旺盛な意欲はどこから?

橋田:意欲はありません(笑)。平成を書かせていただいたことはすごくありがたいですし、本当に感謝しています。でもこれから先どうなるのか分からないですし、1年先にまた書けと言われたらどんな変化があるか…。年寄りの問題ばっかりを書くので、もう書かせてもらえないかもしれませんね(笑)
石井:それはないです(笑)。いつもこう言い合って喧嘩しています(笑)
橋田:(笑)

ーお2人の関係は?お互いの存在とは?

橋田:この方が私を見つけてくださったの。『袋を渡せば』(昭和39年)というホームドラマでお仕事をくださって。映画はセリフが短いのですが、テレビは日常のものだと仕込まれちゃった。それでこんなに長いセリフを書くようになったんです(笑)。でも、石井さんのおかげでホームドラマが書けるようになりました。石井さんが「リアルでいいんだよ」とおっしゃったので、リアルなドラマを。私の作家としての命の恩人です。だから喧嘩しても絶対に裏切らないと言っております!しょっちゅう裏切っていますけどね(笑)。でも、主人よりも両親よりも、生きる上で影響を与えてくださった方です。今でも話がツーカーでいくのはこの方だけですね。他の方には10言うところ、2で済んじゃう。そういう関係です。だからこの方には長生きしていただきたい。私のお葬式してください!
石井:知りません!いろんなことおっしゃいますけど、私も橋田さんにいろんなドラマを書いていただいて。日曜劇場も100本以上単発で書いていただき、そのあとに連続ドラマを書いていただいて。初期の頃ですが、「このセリフはどうなんだ!」って電話で怒ったことがあって。電話を切った後、私の母が「娘がスイマセン」と橋田さんに電話を入れたそうです。
橋田:それくらいひどく怒られたの。で、ある時怒られなくなって、見放されたかと思いました。そしたらね、「もう言わなくても済むようになった」って。それ覚えています?ちょっと寂しかったですね、怒られている方が寂しくない。
石井:そんなに怒った?覚えてない。
橋田:結構、怒られました(笑)。「これ、しゃべってみなさい!こんなこと言う?」って。
石井:橋田さんは映画から出てらしたから、テレビのセリフとちょっと違ったんです。こんな風に酷いことを言い合いながら、お互いに50年生きてきました。お互いに電話でしゃべったり、不思議な友人です。

ーホームドラマの魅力は?

石井:私、サスペンスはあんまりやってないんですね。それは家族の中にこそサスペンスがあると考えているので。
橋田:私はホームドラマしか書けないから書いているだけ。人殺しと不倫は書かないと決めています。

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ー「夫婦」をテーマにした理由をお聞かせください

橋田:いろんな夫婦を書いていますからね。一番大事なのは相手を認めること。五月は勇を認めてあげなきゃいけないし、勇は五月を認めてあげなきゃいけない。お前なんかもういらないよ、じゃ困りますから。いらないと思うことがあっても、最終的には大事に思う、その過程を描きたいと思いました。

ー今一番楽しいことは何ですか?

橋田:石井さんはお仕事です。それはよく分かっています。お仕事と人のおせっかい。お世話してあげて、気を遣う。それがこの方の命ですね。私なんかは遊ぶことしかないですけど(笑)。
石井:遊び方を知らないので
橋田:クルージングへ行こうって言っても嫌だって。
石井:面倒くさいです
橋田:面白いよって言ってもダメ。
石井:楽しいことというか、お仕事のためには健康が一番だと思っています。
橋田:やっぱり仕事のための健康でしょ?私は遊びのための健康
石井:遊び方がわからないんだもの。昔はよく友達とダンス行ったりしましたけど、今はそういう気もないし、やっぱり人とお付き合いしていることが本当にうれしい。私がこの仕事をする時に、「人にしてあげたことは忘れなさい。人にしてもらったことを一生覚えいなさい」と父に言われました。そうでなきゃ長く仕事はできないと。ですから、人を大切にしていますね。

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ー最後に、『渡鬼』を通じて言いたいことは?

石井:家族っていいなぁと思っていただきたいなと思います。今回は「幸楽」の仕事が忙しく、自分たちの今後について語ることが少なかった勇と五月が、病室で二人きりになることで、どのような会話が生まれるのかご注目ください。言葉を交わすことで生まれる信頼や夫婦愛。普段は反発しながらも愛おしい人だと気づく幸せ。そんなことが伝わると幸いです。五月だけではなく、五姉妹のそれぞれが相方とのつながりを育んでゆきます。一年お待ちいただいた視聴者の皆様にご満足いただけるような作品に仕上げることができたと思います。ご期待ください。

橋田壽賀子ドラマ『渡る世間は鬼ばかり』三時間スペシャル2018 は9月17日(月・祝)よる8時からの放送です。どうぞご期待ください。