インタビュー

前田吟さん(野田良役)

弥生さんの夫・良さん。紆余曲折を経て今は植木職人として活躍していますが、家族の問題は複雑です。家族であるために奮闘する良さんの想いを、前田さんがどう演じているのか伺いました。

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この20年を振り返って、思い出に残っているエピソードを教えてください。

13,4年前、目に良性の腫瘍ができてしまったことがあったんです。ドラマを見てくださっていた眼科の先生がたまたま長山藍子さんのお知り合いの著名な先生で、連絡してくださって手術していただきました。ずっと自覚症状はあったんですが、だましだましそのままにしていたのが、更に悪化させてしまったんです。思いのほか大手術でしたが、ちょうど撮影の狭間で、現場をとめずになんとかこなせました。いわきに出張した頃で、現地でのロケで、薄い色のサングラスをかけているのがその頃です。俳優生命の危機をこのドラマで乗り越えたことが、自分の中で一番大きな出来事でしたね。

それともう一つあって、ある時突然、セリフが出なくなったことがあるんです。
このドラマは200%覚えないとセリフが出てきません。それが突然でなくなって、本当に驚きました。当日、後半の撮影をストップして、別の日に変更してもらいました。でも、またセリフが出るかどうか心配で心配で、本当に大変でした。
若い頃は勢いもありますから、覚えた気になっていたんでしょうね。年齢の限界というのがきっとあって、今度67歳に来年なりますが、その時が「これまでと違うんだから、もっとたくさん練習しないといけないんですよ」という境目だったのかもしれないですね。
この作品に出演するには、きちっと人の何倍もセリフを覚えて…健康第一ですから、4年くらい前にお酒もやめました。生活と役者の生き様を全て「渡鬼」と一緒に歩んでいますよ。

「渡る世間は鬼ばかり」は、前田さんにとってどんな作品ですか?

携わってこられたことは、運が良かったと素直に思っています。選んでいただいた人間として、喜んでやりたいといつも考えています。どんなにセリフが長くて大変でもね(笑)。ほかの仕事をしながらも、ずっと「渡鬼」が続いています。このドラマは本当に「俳優をやっているんだな」、と実感させてくれますね。

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良さんは、弥生さんには家にいて欲しいようですが、前田さんご自身はどのようにお考えですか?

ぼくも女房を働きに出すのが好きじゃないので、30年前から事務所は家族でやっています。わがままと言えばわがままかもしれませんね。良さんは、相手を許してくれる人です。夫婦は思いやりが大切だと本当に思いますね。きっと、良さんも弥生さんに一緒にいてほしいと思っているんでしょう。以前やっていた「ごはんや」みたいに、一緒に何か出来るといいですね。
佐枝さんはまだ若いから、外でいろんな空気吸ってきてくれればいいと思いますよ。

野田家は今、大変なことになっていますが…

野田家は異色の家庭で、まったく血のつながりのない人たちが集まって暮らしている状況ですが、家族というのは、そんなものだとも思いますね。
ぼく自身、生まれたときから家族のない育ち方をしていますから、こういう家族はよくわかりますね。ですから違和感なく演じられます。なまじ自分の子だと、気持ちが強すぎて親離れ子離れできないのが、現代の家族の欠点です。子どもは自分の所有物じゃないということを理解しないと。そういう意味では、野田家は素晴らしい家族だし、この先も橋田先生に素晴らしくして欲しいですね。

前田さんが考える「鬼」とは、どんなものだと思いますか?

自分の中にもいるし、そこがいいんだと思いますね。みんな仏様ばかりだと思ったら大間違い、それくらいのほうが世の中うまくいくんです。一寸先は闇、いいことばかりじゃないと思っていないと(笑)。家族にだってぼくにだって、そういうところがあります。お互いに切磋琢磨して、鬼たらんとする。自分に対して鬼になって頑張っていくことも大切ですし、あるときは鬼にならないと、子育てにしたって、うまくいかないですよ。
でも、ぼくは俳優としてあまり鬼になれないところがありますね。鬼気迫るくらいにやらないと俳優はだめなんです。それぞれ鬼になって切磋琢磨しないと、面白いドラマはできないと思います。我々ベテランが頑張って鬼になれるようにしないといけないと思うんですけれど、うらまれちゃいけないとか思って強く出られない(笑)。

見てくださっている皆さまにメッセージをお願いします。

男の人で、「現実的すぎて見られない」という人がいらっしゃいます。そこまで言わなくていいよ、と思うんでしょうね。でも、バラエティに富んだ職業の、いろんな年代の男性陣が頑張っていますので、ぜひ見ていただきたいです。見始めたらハマりますから、奥さんと一緒に見てください。