インタビュー

脚本 橋田壽賀子さん

20年にわたり「渡る世間は鬼ばかり」で、日本の家族を描き続けてきた橋田壽賀子さん。いよいよ最終シリーズですが、お元気の秘訣、ドラマで皆さんにお送りするメッセージについて伺いました。

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この20年で、ずいぶんと社会が変わってきましたが…

本書きたいことのテーマは変わりませんから、わたしは時代にあわせて何かを変えようとは思わないですね。一貫して、メッセージを送り続けます。
トレンディドラマ全盛の時代にホームドラマをスタートさせて、皆さんに見ていただけました。時代が3Dになろうが、じっくり心理がわかるドラマがあってもいいと思っています。
社会の出来事としては、バブルがはじけたことは強烈でした。でも一番驚いたことは、携帯電話が出来たことです。
新しいものを取り入れていますが、わたし自身には必要ないです。ツィッターなんて、わたしみたいに長いセリフを書く人間には無理ですしね(笑)。

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今回でついに最終シリーズとなりますが…

本当は前回の、第9シリーズでやめるはずだったんです。でも、仏壇の主人が「書け書け」って言うんですよ、憎らしいですね(笑)。肉体的にも精神的にも限界だと思うときもあったんですが、まだこうして書けるということは、ありがたいことです。
今、週に3日は泳いで、ほかの4日はトレーニングをしています。泳ぐときは大体1kmくらいでしょうか。泳げているうちは、まだ書けると思っていますよ。でも、80歳を過ぎてから、がくっと来ましたね。まわりに少し労わって欲しいんですけれど、誰も「書かなくていいよ」とは言ってくれないんです(笑)。

そういう情報はどこから取り入れているんですか?

あまり外に出ませんから、新聞の投書欄をよく読んで参考にしています。世間の方がどんなことで怒って泣いて、喜ぶのか…ニュースやドキュメンタリーもよく見ていますね。世間で何が起こっているのかを取り入れていますが、恋愛の話があまり出てきません。自分がしていませんから(笑)。

「渡鬼」のキャラクターの中で、一番近い人は誰ですか?

自分に近い人はいませんね。かろうじて言うなら、節子でしょうか。わたしに子どもがいれば、きっとあんな母親になっていたと思いますよ。生き方の理想としては、タキですけれどね。今、夫が亡くなって、周りと縁を切って一人で生きているのが理想です。
いい加減、同じ名前を書き続けるのに飽きてきました(笑)。でも、登場人物はみんなわたしの家族であり、分身です。男性は夫がモデルですから、みんなマザコンです(笑)。

ご自身の過去の作品や、ビデオをご覧になることはありますか?

見ませんね。過去が嫌いですから、見逃したらそれっきりです。本を書いてお渡しした段階で、嫁にやった娘みたいなものなんです。ですから、撮影現場に行くこともしません。出演者、演出家にすべてお任せして、出来上がったドラマをテレビで見て、「ちょっと不細工になったかしら?」と感じたり「キレイになったわね」と思ったりするのが楽しいです。

石井プロデューサーとは、どのようなやり取りをされていらっしゃるんですか?

お互い分かりすぎていますから、特に打合せはしないですよ。お互いに深く信用していますから、「きっと、これは気に入ってくれるな」というのは分かりますしね。「何か言っても、あなたはそうは書かないでしょ」と言って、好きに書かせてもらっています。

石井プロデューサーは「渡鬼は日常のミステリー」とおっしゃっていますが。

人の心の行き違いというのは、ミステリーの要因だと思いますよ。たとえば離婚問題なんて、人生においてはきっと最大級のミステリーでしょうね。
ミステリー作品はとても好きですよ。ドラマも好きでよく見ていますし、小説も大好きです。わたしが書かないのは、そういう注文が来ないからです(笑)。ハヤカワミステリのシリーズは全部持っていて、構成をずいぶん勉強しました。
石井さんと一緒にやってきたら、すっかりホームドラマ作家になってしまいましたが、構成上はミステリアスにしていますね。

ご覧になっている皆さまにメッセージをお願いします。

まだこれから1年間もあります。現在、14話くらいまで書き上げていますが、ちょっと旅行にでも行ったら、あっという間に追いつかれてしまいます。
TBSの創立40周年記念で書き始めて20年、ドラマを通してメッセージを発信できたということは、作家として得をしていました。今だったら介護の問題、ニート…なんでも書くことはありますね。あまり具体的な話をしてしまうと、見ていただけなくなってしまうので言えませんけれど(笑)。

このドラマには、自分が経験したことだけではなく、願望や理想がたくさん入っています。わたしの書くドラマは、セリフが多いと言われますが、人は「言わなきゃ分からない」んです。とにかく相手の気持ちになって、それから自分の考えを口にする。皆さんも自分の気持ちをちゃんと口にして、相手に伝えるようにしてください。