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第3章

ヨーロッパのミイラ

ヨーロッパ各地でも多数のミイラが発見されているが、その多くは自然ミイラに分類される。ヨーロッパのさまざまな自然環境を反映してか、ミイラとなった原因も多様である。
そのなかでも、北ヨーロッパに点在する湿地では、驚くべき保存状態を示すミイラが発見されている。これらは湿地遺体(ボッグマン)とよばれている。
ウェーリンゲメン(Weerdinge Couple)は1904年に発見された2体の湿地遺体で、紀元前40年から紀元後50年前と推定されている。これらの湿地遺体には殺傷痕や絞殺痕が見られることが多く、遺体の上に交差した木の枝や石が置かれる場合もある。そのため、湿地遺体は「生贄として捧げられた」、または「犯罪者として処刑された」と考えられている。
また、ヨーロッパのミイラで興味深いものがカナリア諸島のミイラである。カナリア諸島の先住民であるグアンチェ族の有力者が亡くなると、遺体表面に泥や樹脂などが塗られ、遺体は石板の上に置かれて、昼は日光にさらされ、夜は煙でいぶして乾燥させられた。古くは約1600年前から行なわれ、スペインの統治が始まった約500年前にもつくられていた。彼らのミイラは祖先崇拝の一種としてつくられたと考えられており、カナリア諸島で独自に発達したミイラ文化と考えられている。

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ウェーリンゲメン

1904年、オランダで発見された2体の湿地遺体。当初大きい方が男性で小さい方が女性と推定されたが、後に小さい方も男性と判明。残念なことにDNAの保存状態が悪いため2人がなぜ一緒に埋葬されたのかは不明である。
ドレンテ博物館所蔵 Collection Drents Museum, Assen, The Netherlands.

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彩色が施されたアンナの頭骨

ヨーロッパでは、人間の遺骨が納骨堂や納骨容器に保存されることがあり、死者の頭骨に絵を施されることもあった。この頭骨は若い女性のものである。
ゲッティンゲン大学人類学コレクション所蔵 UNIVERSITY OF GÖTTINGEN, ANTHROPOLOGICAL COLLECTION

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カナリア諸島のミイラ

テネリフェ島に住むグアンチェ族は高貴な人の遺体をミイラ化していた。この女性のミイラでは、内臓は取り除かれず、おそらく身体は儀式的に清められ、表面に様々な物質が塗布されていた。遺体の乾燥も人工的な痕跡は認められない。その後、ミイラはヤギの皮で作られたマットに包まれていた。
ゲッティンゲン大学人類学コレクション所蔵 UNIVERSITY OF GÖTTINGEN, ANTHROPOLOGICAL COLLECTION

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主催:国立科学博物館、TBS、日本経済新聞社
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