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第1章

南北アメリカのミイラ

南北アメリカでは数多くのミイラが発見されている。例えば、現存する世界最古の自然にできたミイラ(自然ミイラ)はアメリカ合衆国・ネバダ州の洞窟から発見された「スピリット洞窟のミイラ」で、約1万年前のものと推定されている。ただ、最も重要なミイラは、南米大陸の太平洋沿岸地帯から中央高地にかけて存在していた古代アンデス文明のミイラである。
チリ北部海岸の砂漠に住んでいたチンチョーロ族が人工ミイラづくりを始めたのは約7000年前にさかのぼる。インカ帝国時代では、ミイラは社会的に重要な意味をもっていた。それを端的に示すものとして、ペルー北部の高地に位置するチャチャポヤス地方で発見されたミイラが有名である。この地方では、インカ帝国がこの地方を征服する以前から先祖の遺骨を布で包み、崖の岩棚に安置する風習があったが、インカ帝国の支配後に、ミイラのつくり方が変わったことがわかっている。
古代アンデス文明では文字が残っていないため、ミイラの背景にある思想的・宗教的背景ははっきりとわかっていない。しかし、「遺体を保存し、生きているように訪問して敬う」という先祖崇拝の一つの在り方として理解することができる。

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チャチャポヤのミイラ・ジャングルのミイラ

完全な状態で発見された数少ないミイラ包みのひとつ。彩色で模様が描かれた布はミイラ包みコレクションのなかでも珍しく、熱帯雨林地方の文化との関連性が考えられている。
ペルー文化省・レイメバンバ博物館所蔵 Museo Leymebamba ©義井豊

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下腿部を交差させた女性のミイラ

20-40歳の女性ミイラ。副葬品からペルー中央海岸のチャンカイ文化に属することがうかがえる。CTスキャンによる分析では、手の中に人間の乳歯が2つ存在することが明らかになった。
ライス・エンゲルホルン博物館所蔵 REIS-ENGELHORN-MUSEEN, MANNHEIM

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主催:国立科学博物館、TBS、日本経済新聞社
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