出演者インタビュー

月曜ミステリーシアター『刑事のまなざし』2013年10月7日より毎週月曜よる8時放送

出演者インタビュー

松重豊さん 福森誠一役

福森誠一という男性はどんな人物でしょうか?

原作にはないキャラクターなので、役作りという点で言うとドラマオリジナルということになりますけど、企画書のプロットには夏目を刑事へ導いた人物となっています。新人刑事の指導係でもあって、いわゆる夏目の後見人ということですよね。刑事というところでいうと、いわゆる所轄の叩き上げのベテランということでしょうか。

写真

まずはこれくらいしか、演じる上での拠り所みたいな部分はなかったんですけど、話が進んでいくうちに何か5年前に女性絡みの過去があって云々と、新たな背景が見えてきたところです。そんなように見え隠れしていた福森の過去については、第9話で出てきます。

そんな福森を演じる上で気をつけている点というと?

今までたくさん刑事役をやってきた中、僕ぐらいの年齢になってくると刑事でもお偉い役か、もしくは叩き上げのベテラン刑事という2種類になってくるんですけど(笑)、今回はその後者の方です。例えば、第1話で刑事ドラマの金字塔ともいえる「太陽にほえろ」でゴリさんを演じられた竜雷太さんが出演されていましたが、僕の年齢的にはゴリさんではなくて、露口茂さんが演じられた山さんのような役柄だと思うんです。僕的には、これからの自分の年齢も考えて「定年間近の刑事をどう演じるか?」という新しいジャンルへの挑戦というところもありまして、そんな部分も考えながらいわゆる“枯れた”感じも出していこうかなと考えています。でも、言わせてもらえれば、椎名桔平くんと一つしか年齢が違わないのに“先輩刑事と新人”という格差を付けられてるので(笑)、あえて僕は“枯れた”部分を意識していますね。
演じるということに関しては、例えば若い刑事というと、畳み掛けるようなセリフの応酬みたいな血気盛んな感じを出すところなんですけど、今回演じている福森という酸いも甘いも噛み分けているような刑事ならではの雰囲気を出したいと思っています。勢いではなくて、なにか別のリズムを刻むというか、ちょっとオフビート的なノリが出せればいいなという気がしています。セリフの応酬というのは刑事ドラマの一つの醍醐味ではありますが、この刑事ドラマは普通とはちょっと違うので、割とじっくりと見せていけたらと思っていて、そんな中、福森という役を通して普通とは違うリズムを出せたらなと考えています。上手くできているかどうかは、わかりませんけど。
共演者のみんなとそこまでの話は具体的にはしていませんけど、それぞれに素晴らしい持ち味があって、またそれをお互いにわかっていると思うので、「今までとは違うパス回しをしてみようぜ」といった感じに、ちょっと変化を付けてセリフのキャッチボールをしている部分はあると思います。そういう意味では、良いチームワークの中でセリフのやり取り、パス回しができていると思います。そんなオトコ4人衆の中に小野ゆり子さんが入ってきて、ちょっとおもしろいところへボールを蹴ってくれたりすると、それがまたおもしろくなるという感じですよね。特に、捜査会議のシーンなどは、どの刑事ドラマにもある単純なシチュエーションですけど、それをまたちょっと違うおもしろいフィールドに変えてプレイができたらいいなと、僕らみんなが考えていることだと思うので、そうできたら楽しいですよね。ほんの小さな部分の違いだけかもしれませんが、挑戦する気持ちは持っていたいと思います。

撮影現場の雰囲気はいかがでしょうか?

「和気あいあいとしていて、すごくいいですよ」という答えが一般的だと思いますけど(笑)、果たして、和気あいあいとしている現場が良い作品を作っているかというと、そうではないと思うんですね。役者それぞれにポジションがあって、具体的にはセリフの量が違うとか出番が多い少ないとか色々ある中で、お互いが程よい距離を保ちながら一つの作品を作るということが大切なところだとすると、このドラマの現場は本当に楽しいものになっていると思います。勘違いしてほしくないのは、ただ仲良くワイワイしているだけじゃないということですね。抱えている役の重さとか責任というものを、お互いが測りあった上で、リラックスできるところはリラックスしようよということですよね。その辺のシグナルはそれぞれ出せる人たちだし、空気感は共有できていると感じています。
やっぱり、リラックスするということが芝居をする上でいちばん重要な部分だと思うので、リラックスの仕方みたいなものを芝居が始まる前にお互いで確認しあうのは大切ですよね。サッカー選手が試合前にパス回しをするとか、野球ならキャッチボールをするのと同じことで、それが僕らの場合はざっくばらんな日常会話だったりするんだと思います。もっと言うと、リラックスするための手段として、撮影の合間に雑談をしているとも言えますよね。いわゆる無駄話も、芝居のためなんですよ。もちろん、ただただ楽しいだけのバカ話もしますけど(笑)、良い現場というのは、やっぱりどれだけリラックスして芝居ができる環境にあるかということだと思います。

共演者の印象はいかがでしょうか?

椎名さんとは、かれこれ20年以上の付き合いになるんですけど、第9話の台本が出た時には「福森にスポットが当たる話でうれしいよ」なんてメールをくれたりして、なんだか気恥ずかしいんですよね。お互い、最初は舞台からこの世界に入って、それが今はテレビの仕事をしているんですけど、“芝居を創る”という部分はずっと変わらず繋がっているし、お互いに絆みたいなものは感じていると思います。そんな関係性を、このドラマの中の夏目と福森の関係性に利用させてもらうのもアリじゃないかと思っています。
要くんと知り合ったのは10年前くらいなんですけど、その時から変わらず“ベテラン感”みたいなものがあるんですよね、若いくせに(笑)。なんというか、見た目はカチッとしていてすごく真面目さを感じるんですけど、その芯にはおもしろいものがあって、そのユルさみたいなところが彼の魅力だと思います。
北村くんは、いろんな方と共演していろんな役をやってきた、いわゆる実力者だと思います。本当に実力のある方なので、もっともっといろんな役に挑戦するところを見たいですね。僕個人的には、彼が演じている長峰にもっと活躍してほしいと思っています。もっと脚本家さんには、北村有起哉という肉体を借りて、いろいろと遊んでいただければと思うんですよね。
小野さんは、こんなオジサンたちの中にいて自分を失うことなく、本当に頑張ってくれていると思います。ちゃんと僕らの輪に入ってきてくれるし、僕らと比べて芝居の経験こそ少ないとしても、一緒に現場にいていろんなものをグングン吸収しているなって、そばにいて感じます。

“まなざし”という言葉で連想することというと?

主観的ではなくて、誰かが見ている“客観的”な目線だと思います。なにかに向けた誰かの“まなざし”をどう見るかという感じでしょうか。このドラマで言うと、夏目が見ている目線は「どんな目線なのか?」ということを探るというか、感じるというか…。その目線をカメラで上から狙うのか? 俯瞰で捉えるのか? それとも下からあおるのか? どんなカメラアングルで“夏目の目線”を捉えるのか、そこをドラマをご覧のみなさんに楽しんでもらえるようなドラマにしたいと考えていました。

福森のまなざしということでは、やはり夏目に向けてのまなざしだったり、涼子へのそれだったりだと思います。夏目が事件にどう向き合っているのか、その目線“まなざし”を福森はどう見ているのか? ということだと思います。さらに言うと、ドラマを観てらっしゃるみなさんが、さらにどう見るのか? そんなところを探りながら楽しんでいただければうれしいです。

写真

ズバリ、このドラマの見どころというと?

これから原作にはないエピソードが増えてくると思いますが、そこでレギュラーメンバーの新たな一面が見えてくるかもしれません。今までの刑事ドラマとは違う、もしかするとがっかりするほど淡々としている作品かもしれませんが、見て損はないぞという責任は取っている気はしています。これから最後まで、派手なアクションもカーチェイスもバトルもないと思いますが(笑)、じっくり見ていただける作品だと思いますし、ときにはちょっと涙腺が緩む部分もあると思いますので、ぜひ温かいまなざしで見守っていただければと思います。

PAGETOP