インタビュー

西郷隆盛さん[藤本隆宏役]

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― 『JIN -仁-』へのご出演依頼があったときのご感想をお聞かせください。
俳優業をやらせていただいている以上、どんな仕事でもお声掛けいただけることは大変幸せなことですが、これだけ注目されている作品にキャスティングして頂けたことは本当に嬉しいことでした。大人気作品、そしてその続編ということもあり、かなりの重圧もありましたが、とにかく与えられた役を作品のために全うすること、それだけを考えました。
― これまでに、前作や原作などをご覧になったことはありましたか?もし、ご覧になっていらっしゃるようでしたら、どんな印象を持たれたのかお伺いしたいです。
もちろんDVDや再放送等で何度も見させていただきましたし、原作も好きだったので、改めて全巻揃えて一気に読ませていだきました。連続ドラマなのにそれぞれの回に大きな感動とメッセージ、そして早く次が見たいと思わせる演出。どんな方法で撮っているんだろうか??とにかく俳優としてではなく、一視聴者として楽しませていただきました。毎回沢山泣かされましたが(笑)。
― 『歴史上の人物』を演じるということに対して、プレッシャーは感じていらっしゃいますか?また、西郷隆盛を演じるにあたり、工夫されていらっしゃることや、難しさを感じていらっしゃることがあればお聞かせください。
(写真)演じさせていただけることが決まった後、西郷さんを感じるために改めて鹿児島に渡り、出来る限りの勉強をしたのですが、とにかく“人としての懐”というのでしょうか、奥行きが深すぎて、文献を調べれば調べるほど迷宮に迷い込むような難しさがありました。真っ直ぐすぎるお人柄なのか、それとも何を考えているのか分からない人間なのか、その不可解さ、その謎めいた部分そのものが西郷隆盛という人なのだろうと、そんなことを考えつつ各回の監督さんと相談させていただきながら演技をしました。
それから…鹿児島弁は手ごわかったです。私自身、西郷さんと同じ九州の出身ですが、育ったのは福岡県。似ている言葉も多くある一方で、逆にイントネーションが違ったりと、外国語を学ぶより難しかったです。
― 歴史(国・時代を問わず)には興味がおありですか?興味をお持ちの「時代」や「歴史上の人物」などがあれば、その理由も併せて教えていただきたいです。
世界史は苦手なのですが、地理・日本史は好きで、日本の歴史に関することならなんでも興味がありました。お城が好きなため、おのずと安土桃山〜江戸時代の初期位が得意分野になったのですが、ここ5年程は立て続けに1900年前後の時代に生きた方の役を演じさせていただくことが多かったので、当初は苦手だった幕末〜明治もだいぶ解るようになってきました。
ちなみに城繋がりで、加藤清正、藤堂高虎、黒田如水も好きな歴史上の人物です。彼らのかっこよさは男の憧れですよね。
― 『JIN -仁-』のプロデューサーを務める石丸彰彦氏とは、水泳という共通項を通じて、かねてより顔見知りであったと伺っています。そのあたりのいきさつや、石丸氏に対してお持ちの印象、またそんな所縁のある石丸氏と共に仕事をすることになってみての感想などをお聞かせください。
沢山エピソードがありすぎて、ここでは全部話せないのですが…(笑)。昨年TBSさんを訪問した際に、石丸さんが「ずっと西郷を捜していて、やっと見つけた」と。そして、「いつか藤本さんと仕事をしたかったんです」と言ってくださったんです。この世界に入り、お互い連絡を取り合ったこともありませんでしたが、同じ水泳界から巣立ち、今日では水泳と全く違う分野にチャレンジされていた石丸さんの活躍を、私自身もちろん知っていましたし、同じ思いで、同じような境遇でここまで辿り着いて、そして会うべくして会ったんだということを思うと、やっと探し求めていた戦友に出逢えたような、そんな感動の再会でした。
そして、彼のこの作品に賭ける『想い』と『熱い情熱』は皆さんご存知の通り。石丸さんは大の“幕末通”で、過去に「西郷隆盛」の論文を書かれたこともあるというツワモノ。まあ、そりゃ、、、演じにくかったです(笑)。
― これまで演じられた中で、一番印象に残っているシーンを教えてください。
(写真)内野聖陽さん演じる坂本龍馬とのシーンも全て印象に残っていますが、やはり忘れられないのは、私にとって正式なクランクインになった第一話の「南方先生による西郷隆盛、虫垂炎手術」のシーンです。大沢さん演じる南方先生の、ビンビンと放出されるエネルギーに圧倒されたのを今でも良く覚えています。本番前に何度か行われたリハーサルでは、南方先生の「あなたの腹を切らせて下さい!」の台詞に我を忘れて聞き入ってしまい、ついつい「そ、そうですか」と頷いてしまいそうになったほどです。これは共演された方にしかわからないかもしれませんが、大沢さんの「気」はすごいです。
もう一点、その日は一日中、裸で横たわったまま数時間過ごしたのですが、そんな撮影は今後もそうそうないと思いますし、忘れられない貴重な経験になりました(笑)。
― この作品で、「共演できて嬉しかった方」はいらっしゃいましたか?主演の大沢たかおさんとは、なにか現場でお話されたのでしょうか。また、藤本さんファンの方としては、以前舞台でご一緒されたことのある内野聖陽さんとの再共演も、非常に興味深いところだと思うのですが…(笑)。共演のみなさんとのエピソード等があればお伺いしたいです。
勝手に思っていることですが、私にとって内野さんは頼れる兄貴のような存在なのです。かつて数年にわたって300ステージ近く共演させていただいたこともあって、久しぶりの共演は本当に嬉しかったです。ただ、その時はオーストリアの作品だったので、今回撮影初日に着物で対面した際は、不思議な違和感で一杯でした。
大沢さんからは、最近水泳をされているというお話をしていただき、(多いときは一時間近くも泳がれるそうです!)芝居と水泳の話を多くさせていただきました。撮影が終わられ、ゆっくりされる日が来たら、一緒にプールで泳ぎたいですね。
― 『JIN -仁-』の現場で、ビックリしたことがあれば教えてください。
(写真)とにかく皆さんタフで驚いています。私の撮影日数は多くなかったのですが、スタッフの皆さんは深夜まで撮影を行い、翌日は早朝から撮影開始、諸々のセッティングや調整、編集作業などもあって、寝る間もなく番組作りに励んでいました。俳優はそんな皆さんの姿を見て、いい演技をしなければと奮起しましたし、美術スタッフ・制作スタッフ皆さんのこだわりと熱意も、言葉には出さないものの、みな解っていて、ひとつのゴールに向かって全員チカラを合わせ、全力で走り抜けている。そんな現場でした。
― では最後に、視聴者のみなさんへメッセージをお願いします。
この作品は、不思議な魅惑の作品。またその一方で、奥深くて難しい、答えのない作品なのかなとも感じています。いつの日かその謎と魔法が解けた時、未来の自分が何を感じられるのか、それを誰かと話したいです。

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