インタビュー

内野聖陽さん[坂本龍馬役]

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― 続編の制作は「必ずある」と信じていらっしゃったそうですね。
当初から、非常に壮大な作品であると聞いていましたし、最終回を迎えてもなお、明かされぬままの謎が多く存在していたので、「これはきっとなにか展開があるな」と…(笑)。
視聴者の方もそうでしょうが、僕自身も“戻るぜよ、あん世界へ”というあの意味深な声の真相が気になってましたし、南方先生が謎の患者から取り出した胎児様腫瘍の正体もまだよくわかっていませんしね。とにかく、落とし前のついていない謎がまだたくさんありますから、この完結編ですべてが明らかになるのでしょうね。楽しみです。
― どんなお気持ちで、続編の撮影に臨んでいらっしゃるのでしょうか?
(写真)前作が多くの皆様に愛されるような作品に育ったということで、視聴者の方も、それぞれ『JIN -仁-』続編に対して、大きな期待や思い入れを強く持っていらっしゃると思うんですね。そういった周囲からの期待感に負けない作り手の強い欲望や新たなハードルを自分に課していかないと、良い続編というのはとても出来上がらないんじゃないかと思います。毎回“攻めの姿勢”でというか、チャレンジする気持ちを失ってしまったらダメだというのは、この作品に携わるみんなが、そこはかとなく感じていることなんじゃないでしょうかね。
― 久々に『坂本龍馬』を演じるということで、なにか行われたことはありますか?
やはりそれなりの時間経過があったので、「仕切り直し」で今回もまた土佐へ行ってきたんですよ(笑)。それで、現地の人たちと触れ合って、その土地の気風を肌で感じたり、実際に龍馬が見た海や場所をまた歩いたり…。5年間の船だけの移動距離で2万キロ以上と言われる龍馬なんで、足跡を全て辿るのは無理ですが、やっぱり実際に龍馬が呼吸していた地に立つと、絵空事でない彼の血を感じます。演じる上でのインスピレーションを刺激されて帰ってきました。
― 流暢な土佐弁が話題となりましたが、こちらもすぐに勘は取り戻せましたか?
(写真)前回は、高知の方にもお褒めのお言葉を頂き、ありがたかったのですが…正直なところ、土佐弁をマスターするのがやっぱり一番大変だったんです。龍馬の気持ちを土佐のイントネーションにのせるという作業が本当に難しくて、なかなか手こずった場面もいくつかありましたしね。でも、最近では、台本を読んだだけで“音”としてセリフが聞こえてくるというか、音でセリフをイメージできるようになってきたので、「ああ、俺も成長したじゃないか」と自分で自分を褒めています(笑)。
実際、耳慣れない言葉なんですよ、土佐弁って。だから、最初はすごく苦労しましたけれど、苦労をした分、だんだん自由に使えるようになってきたので、今は“自分が思い描く龍馬像”と“『JIN -仁-』という世界観が要求する龍馬像”の中でアレンジを加えたりして遊ばせてもらっています。
― 「歴史上の人物」を演じる醍醐味とは!?
実在の人物を演じるからといって、あまり変な気負い方はしたくないなと思っているんです。きっと坂本龍馬だって、100人の男が演じれば、たぶん100通りの演じ方があると思うんですよ。役というのは、多分に役者の“人生”や“性格”などがブレンドされて出来上がるものですしね。
もちろん、龍馬は残された資料を読むだけでもいろんな逸話を持つ男ですから、自分なりに想像力を働かせて演じてはいるんですけれど…僕の演じる龍馬というのは「こんな男だったら素敵じゃないか」「あんな男だったら可愛いじゃないか」「こんな男だったら愛せるよね」って、僕自身が思えるような男。あくまでも、『JIN -仁-』という作品の中で生きている龍馬なので、細かい史実や行動にはあまりこだわらず、イメージを膨らませることのほうに重点を置いて、「こんな龍馬がいたらいいだろうなぁ」っていう願いも込めつつ演じています。
― 龍馬を演じるにあたり、もっとも大切にしていることはなんですか?
(写真)“土佐で生まれ育った男の気風”とでもいうのでしょうか。土佐の人って、「嫌いなものは嫌い」「好きなら好き」で、本当に白黒がはっきりしているし、無駄なことでグズグズ議論したりするのを好まないんですよね。きっと龍馬にも、現代の土佐人と通ずるところがあったんじゃないかなぁと思うので、そういう部分は大事にしながら演じているつもりです。
歴史的に見ると、龍馬は”偉業を成し遂げたすごい男”といえるのかもしれないですけれど…案外、彼自身はそんなことどうでもよかったんじゃないかなぁって、最近思うんですよ。シリアスにゴール目指して突っ走っていたというよりは、ただひたすらにエネルギッシュに動いていたら、最終的にはすごいことを成し遂げちゃっていた、みたいな感じだったのかもしれないですね(笑)。
― 続編のみどころは、どんなところだと思われますか?
もちろん、ラストへ向けての見どころとしては、原作同様に『龍馬の暗殺』というのが非常に大きな節目となることは間違いないと思います。もし、その事態が起こった時に、南方先生がどのように動くのかというのは、一視聴者としてやっぱり気になりますしね。まだ先のことですが、どんな展開が待ち受けているのか…今からドキドキしていますよ(笑)。
あと、続編って、内容がちょっと哲学的になっているところもまた楽しいなと思っているんです。ただ単に、現代からタイムスリップしてきた男が様々な人の生死に直面し悩み苦しみながら生きていくというだけでなく、歴史の修正力というのがテーマになっているだけあって、単なるSF作品に留まらない、大人から子供まで楽しめるつくりになっているなって。最近、家族そろってお茶の間でみられるような番組ってなかったような気がするので、そういう作品に携われて心からよかったなと思っています。
― 大沢たかおさんをはじめとする、共演者のみなさんとのお芝居はいかがですか?
前回は、本当に初めてのメンバーだったから、自分の役割やら相手との関係性とか手探りまさぐり状態で…。今はもうお互いの役柄としての“立ち位置”みたいなものがわかっているから、無駄な緊張無く相手を信頼して楽しんでやれているんじゃないかな。撮影の合間には、大沢さんともくだらない話をしてますよ。でもまぁ、今回も大沢さんは本当に大変なんですよ。セリフの量も半端じゃなく多いし、手術シーンもカット数が激しく多いし…。テレビの前では楽しんで見ることのできるようなシーンでも、ひとつひとつ時間をかけて丁寧に撮っているので、大沢さんは非常に苦労されていると思うんです。だけど、彼はいつでも笑顔を絶やさないので、偉い!と思って見つめてます(笑)。龍馬がなぜ南方先生を敬愛するのか…、それは、内野龍馬にとって大沢仁先生だからだ、みたいな感覚になってきていますね。大沢さんは龍馬が愛した仁の“純粋さ・ひたむきさ”みたいなものを持っていらっしゃるなと、僕自身すごく感じているので…。
ということで、現場はいい感じだと、思うぜよ(笑)。
― もし、本当に龍馬の暗殺が回避されていたとしたら、その後、龍馬はどんなふうに生きたと思われますか?
(写真)新政府の組閣案に「自分の名前が入っていないぞ」と言われ、「自分は世界の海援隊でもやりますかな」っていうような男だから、もし生きながらえていたとしても、政治家にはなっていないような気がするんですよね。きっと、彼は性根が『商人』なんですよ。本当に海が好きで、船が好きで“世界を股にかけて活躍したい”と願っていた男だから、巨大な貿易会社の大商社マンとか…日本の中だけでチマチマと動いてはいないような気がしますね。でも、演じれば演じるほど、龍馬の「商人的な発想」と「世界を見つめる目線」が本当に新しく、なお且つパワフルで、「やっぱりこの人は、武家社会・封建社会には収まり得ない男だったんだな」ってすごい感じます。でも、自分の誕生日が命日になるなんて、話として出来過ぎていて、まるでお伽噺でも聞くような感覚になってしまいます。彼の人生が、日本を変えるべく神に遣わされたのかって思えるほど“凄い存在”なので、あの後も生き続けていたら…という想像がなかなかできなくて。龍馬が“自分の進むべき道”を見つけてからの5年間は、彼にとって息をつく間もない程の濃厚な歳月だったと思うし、その間にやるべきことをすべてやったのかもしれないなぁと、そんな気もしています。
― では最後に、メッセージをお願いします。
この作品が多くの方に支持を頂けているのは、原作から始まり、プロデューサー、シナリオ作家、役者、スタッフという何重もの人生のフィルターにかかって、高度に練り上げられた贅沢な一品になっているからだと思います。それぞれの持ち場で、それぞれがいい結果を出そうとして取り組んでいる姿勢が、画面にもそこはかとなく滲んでるように思います。一出演者として、この作品に様々な祈りや希望や願いを込めながら、最後まで“本気”で取り組んでいきたいと思っております。
最後まで楽しんで観とーせ!!!

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