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「詰ん」でも終わらない「対局」の中で【2018年7〜8月号】


5月28日、朝日が差し込む中、朝8時半からの参議院での予算委員会だった。1月に始まった通常国会、すでに4か月以上が過ぎ、「最終盤」。しかし、この直前に、当時の佐川理財局長が「廃棄した」と繰り返していた森友学園への国有地の払い下げの「交渉記録が」発覚、「決裁文書」の改ざんと合わせ、1年半前に始まった不祥事が「泥沼」の状況の中での総理出席の審議なのだ。

ロシアのプーチン大統領との首脳会談(5月26日)をこなし、帰国したばかりの安倍晋三総理は、さすがに疲れた様子で、閣僚席に着くと隣の麻生太郎財務大臣と二言三言なにやら話していた。そして、最初の質問に立った自民党の森まさこ氏は、だしぬけに「総理出張お疲れ様でしたあ」と大声を張り上げ、新たに提出された文書について「3000ページ、プラス1000ページ全部読みました。内容は新たなものは出てきませんでした」などと、いきなりの「与党質問」ぶりに、「新たなの出てきたよ」「何言ってんだよ」とヤジがあがった。


枝野幸男氏「ほかのテーマについてこんなこと起こったら」(2018年6月3日放送)

枝野:「公文書が改ざんされたり、隠蔽されたり、あるいは国会での説明が信用できないという状況では、ほかのテーマについてこんなこと起こったら、もっと困るわけですよ。例えば、財政とか、社会保障とか、外交安全保障。外交安全保障は相手との関係でしゃべれない部分はたくさんありますが、それでも、嘘や改ざんは困るわけですよ。こんな問題を1年間もきちっと説明もせず、やればやるほど疑惑が深まるという状況で、どうしてほかの部分を議論すれば、それが信用できる建設的な議論になるんですか」

そして、「野党質問」が始まると委員会室は一転して空気が張りつめた。

トップバッターの国民民主党の増子輝彦氏が、森友学園問題での「記録文書改ざん」や「廃棄した」としていた文書が出てきたことを質すと、安倍総理は「書き換えが行われていた、あるいはないと答えていたものがあったということについては、私も行政の長としてお詫びを申し上げる次第であります」などと澄ました顔で語るものだから、野党席から「自分が原因でしょお」などといきなりヤジが上がった。その中、「そもそも、そもそもで、これは私が、また妻もですね、事務所もかかわっていないということは明らかでございます…」と答弁を続けようとすると、「書き換えたからないんだよっ」などとさらにヤジが上がり騒然となり、委員長が「静粛にお願いしますっ」と制する状態までヒートアップ。これには安倍総理は「すいません委員長…。いや、なかなか答弁しにくくなるものですから…。なるべき静かに、お静かにしていただきたいと…。このように思うところでございます。そしてですね…今また」とヤジがやまずに、周りを見渡し、しばらくして静まったところで、「ちょっと最初から申し上げますと」などと話し出すものだから、「最初からかよー」などとまた騒然とする状態だった。

そして、増子氏は新たに国会に提出された「交渉記録」での「昭恵夫人」の記載を並べたパネルを持ち出し、「1、2、3、4…」と14まで数え上げて見せた。そして「佐川さんが破棄をしたという交渉記録なんです。ところが出てきたんです。総理夫人としてこれだけのことにかかわっているという記載が書き込まれてるんですよ。総理、これでも昭恵夫人は全く関係ないということでお考えなんでしょうかっ」と声を張り上げた。これに、安倍総理は「不正と言うのはなんでしょうか。不正と言うのは例えばですね、金品を授受をしては行政にこれはこう言う風に政策を変えろと、こういうことであります。これが政治の世界において大きな問題になってきた。贈収賄として問題になってきたところであります。それでは全くないとということは申しあげておきたい」などと答え、委員会室には「おおー」とざわめきが起こった。「そりゃ、そんなのだったらアウトだわ」と思ったりした。


枝野幸男氏「金品の授受は論外」(2018年6月3日放送)

枝野:「金品の授受があれば、もう犯罪ですから論外なわけですよ。安倍総理がとにかく関係したら辞めるといった所からスタートしてること、それから、そもそも金品の授受がなかったとしても、政治的に責任があるのではないかということ。従って、金品の授受がないからというのは全く理由になっていません」

そして、朝だというのに、森友問題をめぐる激しくヤジが乱れ飛ぶなかでの質疑が進み、話題は、安倍総理の「盟友」である加計孝太郎理事長の「加計学園問題」移った。「森友」の後は「加計」とばかりに疑惑が尽きなかった。愛媛県の文書に加計学園関係者の発言として、2015年の2月25日に加計氏と安倍総理が面談し、そこで安倍総理が獣医学部の新設に「いいね」と言ったとの記述があったのだ。安倍総理は、加計学園の獣医学部構想を知ったのは2017年の1月と答弁しており、「愛媛文書」が正しければ矛盾するというわけだ。この発言については加計学園が総理と理事長の面談は実際にはなかったとして、「誤った情報を与えてしまった」とのコメントを出していた。安倍総理は「平成27年2月25日に加計理事長とお会いしたことはございません。通常、総理大臣については官邸においても自宅においても記者の皆さんが出入りする人の名を逐一確認しております。その首相動静にも載っておらず、自宅も含めて会ってはいません」などと言い切ってみせた。「首相動静」に載らない面会はいくらでもあるのだが…。

気づいて、手元にあった5月28日付の日経新聞の世論調査を見ると、「決裁文書改ざん問題で安倍総理の責任は」との問いに68%もが「責任がある」とし、加計問題では「自らの関与や指示を否定する安倍首相の説明」について、74%もが「納得できない」と答えていた。続く立憲民主党の福山哲郎氏は加計学園問題での、加計学園が「誤情報」で愛媛県や今治市に話したという「釈明」について「なぜ加計学園に抗議されなかったんですか」と質した。その時、総理秘書官がメモを渡そうとして、福山氏は「秘書官、いらない紙渡すなっ。総理と話してるのにっ」と、大声を張り上げ、安倍総理は「秘書官に対してそんなに激しい言葉で言われたらですね、委縮してしまいますから」と諭し、その一方で「抗議にそもそもその理由がないんだろうと思います」と、澄ましてみせ、委員会室には「えっ」などとの声があがった。


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