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過去の放送 出演者 時事放談「サロン」 テレビプロデューサーの日々
 
 

野田聖子氏「警告してくれる野党」(2016年9月18日放送)

野田:「この間の都知事選も自民党が公認をした形になった方、とても素晴らしい方なんですよ。でも、自民党の力では勝てないんですね。だからそこを知らしめてくれる、警告してくれる野党というのは、国にとっても国民にとっても必要なんですよね」

熱気にほだされ、小池百合子都知事への都議会一般質問も傍聴したくなり、地下鉄に飛び乗った。西新宿駅を出ると、ビルの谷間に見慣れた都庁の建物が見えた。ホテルハイアットリージェンシー東京を右手に歩くと都議会と2つの都庁の建物の下に着く。仰ぎ見ると何とも巨大な建物だ。向かって左の議会棟に入りエレベーターに行くと、警備服の女性が「とりあえず2階に行ってください」とのこと。2階の部屋には空いたパイプ椅子が50個ほど並び、正面の女性から「申し訳ないのですが傍聴席がいっぱいです。待っていただくこともできますが、整理番号は60番で、今のところ14番までしかご案内できていません」と説明された。「小池ブーム」を見くびっていたのだ。奥のモニターのある場所にいれば声をかけてくれるというので、議場に入るのは無理と思いながらもしばらく待ってみることにした。

モニターがあるのはPRコーナーの一角で、15人ほどが座っており、不思議なことに中年の女性や男性にまじりスーツ姿のサラリーマン風の男性もいた。みんな熱心にモニターに見入り、画面に映る議場では、民進党都議会の若い男性議員が「(都知事選挙での)小池知事の演説は多くの聴衆を魅了し、発信力で都民の心を動かしたように思います」などと盛んに小池知事を持ち上げていた。登壇した小池知事は、紺のジャケットに紺と白の柄のワンピース姿で「都民ファーストの都政の実現に向けました改革を推進するため、都政改革本部を設置したところでありまして、徹底した情報公開、見える化を推進してまいります」と胸を張って滔々と答弁を続けた。

その後、岸本良一中央卸売市場長(後日更迭となる)が答弁に立ち、築地市場の豊洲移転問題について「市場業者への対応でございますが、相談窓口の設置や経済的支援策を行うなど、きめ細かな対応を行ってまいりました」「これからも市場業者の不安や負担が解消されるよう丁寧に対応してまいります」と資料を読んだ。続いて、自民党議員が登壇したが、こちらも「知事は都民ファーストを掲げておられますが、わが党も都民視線でやってきました」と、すっかり「対決姿勢」は影をひそめていた。知事への質問は1人10分強で、これに知事と局長らが10分程度で答弁し、次から次へと進んでいく。

ところが、傍聴は希望してから1時間ほど経つというのに、呼び込みはまったくかからなかった。「ダメだこりゃ」と思っていると、先ほどの受付の女性が不意にやってきて、「整理番号44番までの方いらっしゃいますか」と呼びかけた。「44番からじゃダメだな」と感じたが、多くの人かあきらめ帰ったため、順番が近づいてきた。「それでは49番、50番、51番は」「55番、56番…」と番号が迫り、胸をドキドキさせていると、「では60番」と呼ばれて、不意にまっすぐ手を挙げて「はいっ」と大声を上げてしまった。結局、呼び込まれたのは「63番」までで「64番以降の方、申し訳ありませんがもう少しお待ちください」と慰められていた。テレビや雑誌で都議会に詳しくなっていて、「『生内田』(都議会のドンと言われる内田茂前自民党東京都連幹事長)ってどんな感じかしらん」と期待が膨らんだ。


増田寛也氏「神話みたいなものが」(2016年10月2日放送)

増田:「(内田前幹事長について)週刊誌などで色々書かれてますけど、色々難しい問題、面倒なことについてですね、職員がいっぱい持ち込んでいるんで。それはたぶん知事がサボったり、これまでの知事と職員の構造の中で出てきた事ではないか」

扉を開けて入ると、議場はとにかく広かった。地方議会では名古屋市役所をかつて担当したが、眼前に広がる議場の広さに度肝を抜かれた。手前の議場席いっぱいに都議会議員席が並び、向かいに演壇と議長席。左右に幹部職員らが居並び、向かって右側の最前列に小池知事が背筋を伸ばして座っていた。傍聴席の最前列にはテレビカメラが10台ほど並び、記者も忙しそうにパソコンを打っていた。カメラ席の真ん中にはパイプで1メートルほど周りを囲ったカメラマンがいて、目を凝らすとジャンパーには「東京都議会中継」と書いてあり、TOKYOMXテレビの生放送中だった。席に着くと、小池知事が答弁に立つところで、記念撮影を拒み「悪者」として知られた川井しげお議長が「小池百合子さん」とやさしく呼びかけていて、何やらへりくだっても見えた。小池知事は「教育は未来への投資であります。10年そして100年先を見据えて考えるべきものと思います」「新たな価値を創造する力を養う、培うといったグローバル社会をたくましく生き抜く力を育んでいかなければならない」と流れるように話し続けた。資料を手元に置いていたが、キャスター出身とあり、読んでいる風には見えないのだ。議場では議員がヤジもなく静かに聞き入り、傍聴席にはオペラグラスで「生小池」を見つめる人もいた。夜8時までの定例会中、登壇する議員たちは、しきたりだろうが、いったん小池知事で立ち止まり深々とお辞儀をした。「そうだ」と思い、議場を探すと自民党席の最後部にあの内田茂氏が手を膝の上で組み、じっと目を閉じてうつむいていた。

窓に光が並ぶ新宿の高層ビル街を帰宅のサラリーマンやOLらの人波に交じって歩きながら「そういえば『元始、女性は太陽であった』というのがあったな」と思ったりした。


※本原稿は調査情報11〜12月号に掲載されています。

石塚 博久 (いしづか ひろひさ)
'62 東京都足立区生まれ。早稲田大学卒業後、'86日本経済新聞社に入社。大阪、名古屋、仙台支局(このとき、「みちのく温泉なんとか殺人事件」に出るような温泉はほとんど行った“温泉研究家”でもある)に。
東京本社政治部で政治取材の厳しい(「虎の穴」のような)指導を受け、新聞協会賞(「閣僚企画」共著)も。
'96TBS入社後は、報道局政治部記者、「NEWS23」のディレクターを経て、「時事放談」制作プロデューサー。

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