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女性政治家 〜元始、女性は太陽であった〜【2016年11〜12月号】


朝、8時30分。参議院予算委員会室の記者席の最前列に陣取り眺めると、20分ほどで始まる委員会に向けて大臣秘書官らが資料の束を持って、せわしなく走り回っていた。しばらくすると塩崎恭久厚生労働大臣が席に着き、脇に岸田文雄外務大臣も着席。ぞろぞろと委員席も埋まっていく中、民進党の蓮舫新代表が目にもまぶしい白いスーツに中に黒のインナー姿で登場。後ろからグレーのスーツ姿の杉尾秀哉議員もやってきて、大きな声で「おはようございます」と声をかけていた。そして、安倍晋三総理も明るい青のスーツに紺に白いストライプの入ったネクタイ姿で席に着き、ポットからなにやら液体を飲んだ。この日2016年10月5日は蓮舫氏が代表として初めて参議院予算委員会での質問に立つ日だった。


野田聖子氏「トップなんです」(2016年9月18日放送)

野田:「大事なことは、大臣まではいくんですよ。男性の権力者に認められれば女性も大臣になれるんだけど、蓮舫さんとか小池(百合子)さんはトップなんですよ。大臣とトップの差は相当違うんで、そこを破ってくれたことにすごく感謝します」

質問に立った蓮舫氏は憲法改正問題を取り上げ、「今の憲法にはどこに問題があって、自民党の憲法草案によってどうやって解決されるというお考えなのか」と声を張り上げた。対して、安倍総理は「内閣総理大臣として立っておりますので、憲法の中身について議論する立場にないんだろうと、こう考えている次第であります」とすました答弁で、蓮舫氏は「何に根拠を持っているんですか」と憤懣やるかたない様子だった。これにも安倍総理は「私がここに立っているのは(自民党総裁としてではなく)行政府の長として今回、政府として提出した補正予算、そして補正予算にかかわる法案等々についてですね、ここで答弁する義務を果たしていくわけでありまして」とし、憲法改正論議は国会の憲法審査会において議論すべきとの、またもやすました答弁をした。委員会室には「なんだよー」「おかしいよー」と、朝早くからヤジが沸き立ち、民進党の筆頭理事が委員長席に駆け寄って審議が中断したりした。

さらに蓮舫氏は自民党憲法改正草案に盛り込まれた「家族」の問題について「『家族は互いに助け合わなければならない』。これを憲法に規定するというのは具体的にどういう意味合いなんでしょうか」と赤ペンを右手に挟みながら声を張り上げた。そして、「この男女平等の歴史。そこにあえて『家族』を新設することはむしろ昔の時代に戻るのではないかという懸念を抱いているんです」と続けた。対して安倍総理は「自民党の草案とともにですね、解説が出されているわけでございまして、その中でわが党の考え方について述べているわけでありますが」とし、これに蓮舫氏が「解説はもう読んだうえで聞いてます」と食い下がると、安倍総理は「解説を読んでおられるのであれば、まあそのとおりだろうと、こう思うわけであります」といなした。横に並ぶ大臣の多くが含み笑い。いつのまにやらできていたり、できあがる「ガラスの天井」―。


野田聖子氏「男のはしご」(2016年9月18日放送)

野田:「私『ガラスの天井』というと綺麗に聞こえるから、『男のはしご』って言ってるんですよ。女性でも一人で子どもを産まずにいけば、相当出世もできるし良い仕事もできるけど、女性が母になる時、このはしごにお腹がつっかかって登れなくなっちゃう時があるんですよ。男の人は淡々と『はしご』を上がっていけるんだけど、家族を持った瞬間、女性はその間、上がれなくなったり、その後も色んな子どもとの生き方の中で『はしご』の登りが遅くなるわけですよ。それはやっぱり変えていく、変えていかなきゃ、この国はダメよと、私としては思いますね」

話題は社会福祉問題に移り安倍総理が「まさに財源が大切であってですね、財源を確保していかに保育士の待遇を改善していくかということだろうと」などと答弁すると、蓮舫氏は不意に、稲田朋美防衛大臣に「稲田防衛大臣も同じですか」と水を向けた。委員会室がざわめき、そこからが始まりだった。

稲田大臣が「所管外のことなので」とかわすと、蓮舫氏は「平成23年3月の正論(産経新聞社)という雑誌で、子育て支援と防衛予算についてなんと発言されていますか」と迫りだしたのだ。稲田大臣は「当時の民主党政権、日本列島は日本人だけのものではないという方が総理大臣になられ、辺野古について最低でも県外、国外と言われ、大混乱をし、そしてこの対談をする数か月前には尖閣(諸島)で中国の公船が衝突して大混乱になっている中で、私はその当時の民主党政権の安全保障、防衛に対して大変危機感を持って、その点についてここで指摘をさせていただいているわけです」としたから、民進党議員からは「聞いてないだろそんなことっ!」「ひでー答弁だなー」「謝罪だ、謝罪。なんだ今のー」と怒号がわき、騒然となった。その中、蓮舫氏は「なんと発言したのか読んでもらえますか」と続けたため、ヤジは「読めよ。読めばいいじゃないかっ」「野党時代なら何言ってもいいのかっ」などとさらにヒートアップし、なぜか「読めばいいのよっ」とオカマ風のものまで飛び出す始末。

稲田大臣は、対談の発言の資料を見ながら「子ども手当分を防衛費にそっくり回せば軍事費の国際水準に近づきます。自分の国を自分で守ることを選ぶのか、子ども手当を選ぶのかという国民にわかりやすい議論をすべきでしょうね」と資料を読み上げた。脇で安倍総理はうんざりした表情で眺め、一方、野党席からは「ひどいよー」などとヤジが飛んだ。

蓮舫氏は畳み掛けるように「同じ雑誌で稲田大臣あなたは『日本独自の核保有を単なる議論や精神論ではなく、国家戦略として検討すべきではないか』と発言しているっ」と迫り、稲田大臣は「今、私は安倍内閣の、そして今の状況の防衛大臣として非核3原則をしっかりと守り、唯一の被爆国として核のない世界を全力を挙げて実現するために全力を挙げて実現するために尽くしていく所存です」と語った。蓮舫氏は「はい、気持ちいいくらいまでの変節ですね」とまとめた。質問は1時間40分に及び、長めの拍手に迎えられ質問は終わった。


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